この前に書いたブログでは日本の近代史はおよそ80年の周期で動いているのではないかと思って書いたのですが、実はオリジナルは別にあって、ニール・ハウというアメリカ人が書いたThe Fourth Turning Is Hereという本がそれでした。
この本でハウは、アメリカの歴史の1周期は「およそ80年から100年ぐらい(人間の一生の長さにあたる)の期間で、それは自然に4つの期間に分割できる」と書いており、それを具体的にアメリカ史に当てはめれば「真珠湾攻撃と(南北戦争の始まりである)サムター要塞の攻撃の間はちょうど80年で、サムター要塞とアメリカの独立宣言の間は85年が経過した」となります。
そして、第二次大戦でアメリカが勝利した年である1945年から今年はちょうど80年目にあたる2025年であり、そんな時にトランプ大統領の2期目が始まったのでした。
ハウはこの本の結論部分で「2030年代の初頭において千年紀の危機(millenium crises)が解決し新しい周期が始まる」と書いているので、どうもトランプ2.0ではアメリカの危機が複雑化していくことが確実で解決はもう少し先と予想しているようです。
アメリカがイギリスから独立してからおよそ80年後に奴隷制とそれがもたらす経済政策の違いからアメリカの分裂が激しくなり1861ー1865の南北戦争という激しい内戦になり、「当時南北あわせたアメリカの総人口、約三一〇〇万人のうち、三〇〇万人以上が兵士となり、六〇万人が戦死した。」
(小川寛大. 南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦 (Function). Kindle Edition. )
それから80年後の第二次大戦直前もアメリカでの分裂は激しく、トランプ大統領がよく口にする「アメリカ・ファースト」は大西洋をプロペラ機で最初に横断したチャールズ・リンドバーグがヨーロッパの戦争に参戦したいフランクリン・ルーズベルト政権に対して戦争に加担することに反対だった非介入主義者たちとアメリカ第一主義委員会を発足させ、その当時彼らがよく口にしていた言葉だったのです。
この団体には後にアメリカ大統領になるケネディーやジョンソンも加入するなど決して泡沫的な団体ではありませんでした。
この第二次大戦直前のアメリカの分裂を救ったのは日本の真珠湾攻撃であり、これによりアメリカは分裂を修復することができ国論を統一させることが可能になりました。
そして第二次大戦が終結してから80年後の現在においてもグローバリゼーションや経済のあり方をめぐって、アメリカにおいて激しい分裂が起きており、トランプ一期目から政権を取り戻したアメリカの民主党バイデン政権も結局はグローバリゼーションの矛盾に対して回答を持ち合わせることがなく、トランプ大統領の2期目が発足したのでした。
ただ今回のアメリカの分裂が南北戦争のように内戦に発展するのか、それとも第二次大戦のように激しい外国との戦いになるのかがわからないのは周期論の欠点ですが、アメリカの分裂をアウフヘーベン(止揚)させるような力が働くようになることは予想できます。
またハウによれば政治の問題だけではなくアメリカにおいては経済も周期的な動きをしていたようで次のような例を挙げています。
「アメリカにおいて貧富の格差が著しく拡大したのは、1760年代の後半(アメリカの独立宣言)、1850年代の後半(南北戦争直前)1920年後半(大恐慌から第二次大戦にかけて、そして2000年代のはじめ(ちょうど現在)」
歴史が「周期」的に動いているのではないかと考えている知識人は以外と多くて、この本にもイギリスのアーノルド・トインビーやアメリカの歴史家であるアーサー・シュレジンジャー親子、また『文明の衝突』を書いたサミュエル・ハンチントン、さらには保守派のバイブルである『大衆の反逆』を書いたスペインのオルテガや『西洋の没落』を書いたドイツのシュペングラーもそうだったと書いています。
やはりというべきか、進歩派とよばれる知識人がほとんどいないというのも特徴的です。
これまで述べてきたようにトランプ大統領2.0のアメリカとはこれまでアメリカがイギリスから独立してからおおよそ80数年の周期を3回繰り返す最終段階にあたり、激動の4年間になることだけは確かでしょう。