前回紹介したフランスの経済学者であるトマ・ピケティーは『21世紀の資本』において「特にトップ百分位は、歴史調査という文脈での研究にはとても興味深いグループだ」と書いていて、その理由を「トップ百分位は社会の様相と政治経済秩序の両方に大きな影響を与えるグループなのだ」と書いています。

 

1789年のフランス革命は1%の貴族が持っていた支配権をひっくり返したことが特徴で、同じく1868年の明治維新も1%の武士が持っていた権力を奪ったことでした。

 

明治維新期において、もう一つ重要な指標で1%を示す重要な出来事がありました。日本において最初の衆議院選挙が行われたのは1890年の出来事でしたが、この時日本の有権者は25歳以上の男性で15円以上のかなり高い税金を納める必要があったので、有権者は全国民の1%ぐらいにしかならなかったそうです。

 

つまり、明治維新とは1%の武士を1%の有権者に置き換える作業で、フランシス・フクヤマは『政治の起源』という本で日本の1%の有権者は少なすぎると馬鹿にしていましたが、ピケティーが指摘するようにその数字は政治・経済秩序に十分な影響を与えることができる数字なのです。

 

最初の1%の有権者が徐々に増えていき、現在における18歳以上の日本国民に選挙権が与えられるようになってきたのです。

 

ではアメリカの場合はどうだったのかと言えば、アメリカの初代大統領がジョージ・ワシントンだったのは私も知っていましたが、この選挙が行われたのが1789年でちょうどフランス革命と同じ年に行われていたのは今回自分で調べていて初めて知りました。つまりどちらも日本で言えば寛政元年の出来事だったのです。

 

この時のアメリカの有権者の様相はピーター・バイナートという評論家によれば、「白人のプロテスタントの男性である程度の資産を持つもの」に限られその時のアメリカの総人口の6%ぐらいだったと書いていました。

 

確かに日本の1%の有権者に比べたら多いかもしれませんが、この6%をもってアメリカをデモクラシーの国と呼ぶことの方が遥かに問題が多いです。

 

やはりアメリカの建国も最初は国民の6%を占める「中間層」によって成し遂げられたと考えるのが妥当なようです。

 

このように、フランス革命も明治維新もアメリカの建国という近代の重要な出来事は国民の「中間層」により成し遂げられたのでした。