エコノミストの長濱利廣さんが書かれた『日本病』というショッキングなタイトルの本を読み終わりました。

 

1990年代にバブル経済が破裂して、日本はその処置を誤り、特に1997年の橋本政権で消費税の増税をおこなったことで完全なデフレ経済に陥りました。

 

OECDの定義によれば2年以上に渡り物価が下がり続けることを「デフレ」と呼ぶらしいので、現在の日本経済はデフレとまでは言えませんが、現在でも20兆円程のデフレギャップがあると言われています。

 

デフレのせいで日本はほとんど経済成長しなかったために、その間の成績はひどいもので1992年の平均給与は472万円だったものが2018年には433万円に下がってしまいました。

 

一人当たりの実質賃金も韓国に抜かれてしまい、かろうじてイタリアを上回っているものの果たしてこのままG7に出席を許されるかどうかもわからなくなってきてるのです。

 

長濱さんは日本がこのような状態を抜け出して通常の経済状態に持っていくためには、金融政策と財政政策を総動員しなければならないと主張されています。

 

日本は遅まきながらも金融政策は他の先進国と同様に行ったのですが、デフレの元では金融政策には限界があり、アメリカのサマーズ元財務長官が「中立金利が金融政策の効く水準に戻るまで財政政策を積極的に行うべき」と言うように財政拡大が必要なのですが、いつも日本の政府には財政の赤字の絶対額にこだわりがあってなかなか進まないのです。

 

長濱さんも「政府財務残高で財政の予算制約を図るのは間違いでインフレ率で見るべきだ」と正論を語っているのですが、なぜかこの常識的な意見が日本の大勢にならないのです。

 

先日暗殺された安倍元首相が行ったアベノミクスに対して長濱さんは、それがある程度の雇用を増加させたことを評価していますが、財政拡大については最初の方でしか行わなかったことと2回の消費税増税でデフレ経済から完全に脱却することはできなかったとの評価を下しています。

 

完全にデフレから脱却しなければ、本来投資に積極的な企業体も日本では貯蓄過剰になってしまい(内部留保の問題)、これではイノベーションなども起こらないのです。

 

日本が長期デフレに陥った諸悪の根源は「日本人の努力不足などではなく、過去の政府や日銀の経済政策の失敗」なのでそれを正さなければ明るい日本など見えてこないのです。