エマニュエル・トッドの『第3次世界大戦はもう始まっている』という本を読み終わったので感想を書いてみたいと思います。
この本は4章に分けられており、1章目は雑誌『文藝春秋』5月号に載ったもので、他の2章はトッドが以前に外国でインタビューしたものが載せられており、彼の最新の論考は4章でしか読めませんが、相変わらず鋭い批評をしているのでそんなに不満はなかったです。
だからこの本の感想は主に第4章からのものになります。
トッドは「この戦争は、『ウクライナの中立化』という当初からのロシアの要請を西側が受け入れていれば、容易に避けることができた戦争でした。」と語っていて、これについては私も本当にそう思う。
キッシンジャーなどもウクライナがクリミアを奪われる前からそのように言っていたのに、誰もそれを聞かなかった。ロシアに関する歴史の本を数冊読めば、ウクライナがロシアにとってどれほど重要だったかは簡単にわかったはずである。
さて、今回の戦争でトッドにとって最も意外だったのは、ウクライナの兵士が勇敢に戦ってロシアの攻撃を食い止めていることだった。
確かに2014年のロシアのクリミア侵攻で何もせずに半島を奪われてしまったことを考えるとほとんどの人がウクライナ人の激しい抵抗を予想できなかったのではないか。
もちろん、これにはウクライナ人の頑張りもあるのだが、トッドによればイギリスとアメリカが2014年以来いかにウクライナの軍を再建し、鍛え上げてきたのかという証明でもあったようだ。
そして、そのような重大なウクライナの内部情報をヨーロッパの主要な大国であるフランスやドイツが全く理解していなかったために、戦争が始まるとこの2カ国は慌てまくっているという。
このことからトッドは「軍事的な意味での〝真のNATO〟とは、アメリカ、イギリス、ポーランド、ウクライナ、そしておそらくスウェーデンから成り立っています。」とまで言うのだった。
実はこのようになったのにはトッドはここでは語っていないが、それなりの理由があったと私は思っていて、例えばイラク戦争の時にフランスとドイツは反対していて、それに怒ったラムズフェルド国防長官から「古い」ヨーロッパと批判されていた。
またロシアがジョージアに侵攻する前にも、フランスとドイツはジョージアとウクライナのNATO加盟に反対してブッシュ(息子)大統領と対立していた。
こういうことが重なっていたから、アメリカはロシア嫌いのポーランドやスウェーデン、イギリスなどとは協力していたが、フランスやドイツとはあまり真剣に相談しなかったのかもしれない。
本来フランスとドイツがしっかりと組んでアメリカに対抗したなら、ヨーロッパ大陸においてアメリカが自分の好きなようには行動できないはずだが、フランスはともかく、残念ながらドイツはトッドが言うように日本と同じ「保護領」だから実質的にはフランス一国でアメリカに対峙することになり、それでは残念ながら力不足だったのだ。
その結果アメリカの意向が過剰に反映されてヨーロッパの情勢が決定していくのだった。
ロシアのプーチン大統領はしばしば外国の軍隊を受け入れている国はちゃんとした独立国ではないと指摘していて、これはある意味で正しいと私は思っていたから、彼はウクライナを侵略しないで外国軍撤退キャンペーンなどでもやっていれば日本人の一部もそれに対しては賛成しただろう。
しかし結局プーチンはウクライナを「保護領」にしようと軍事力を発動してしまい、せっかく正しいことを主張していたのに全くの無駄にしてしまったのだ。
最後にトッドはこの戦争は実際にはロシアとアメリカによるものなので、「長期戦」「持久戦」になることを予想しています。
