――「衰退する大国」の危険性とは何ですか。

米ジョンズ・ホプキンス大教授のハル・ブランズ氏

「挑戦者が最も攻撃的になるのは、自信満々で着実に台頭しているときではない。目標を将来達成できなくなると恐れたとき、無謀なリスクをいとわなくなる。これを『衰退する大国のわな』と呼んでいる」

――歴史上はどのような事例がありますか。

「第1次世界大戦前のドイツ帝国だ。1914年までに成長はピークに達した。軍事面で英国に劣勢でロシアとフランスも軍備を拡張した。すぐ劇的な行動を起こさなければという恐れに駆られたに違いない。第1次大戦の緒戦こそ有利に進めたが最終的に大敗した。太平洋戦争前の日本も同様の力学が働いた」

――現在の中国も「衰退する大国」ですか。

「私はそうみる。中国経済は新型コロナウイルス感染拡大の前からピークをすぎていた。習近平(シー・ジンピン)国家主席が10~15年後にライバル国に包囲されると想定すれば、軍事バランスが有利なうちに動く選択肢が浮上する」

――中国は近く人口が減り始める見通しです。

「中国の人口は歴史上前例がないペースで減っていく。中国の国内総生産(GDP)が近く米国を追い越すとの懸念は誇張されているように思う。足元の成長の大部分は過大な資本投下の結果にすぎない」

「今後10年は中国の軍事拡張が続くだろう。米国や同盟国の軍事拡充が実を結ぶのは2020年代後半から30年代初めだ。それまでの時期が危ない。他国に完全に包囲される前に軍事的に挑戦しようとする誘引が働くからだ。台湾がその対象となりうる」

――第1次大戦前の英独関係からどんな教訓を読み取るべきですか。

「曖昧な約束は危険ということだ。第1次大戦前に英国はフランスやロシアと結んだ同盟がどういう義務を負うかを意図的に曖昧にしていた。結果、英国の介入はドイツ進軍を食い止めるのに遅すぎた。米国が台湾を守るためにいずれ中国と戦うと考えるなら、防衛の約束を曖昧なまま放置する利点は少ない」

――ウクライナ侵攻をどう見ますか。

「ロシアにも『衰退する大国のわな』の力学が働いたとみていい。ロシア経済は08年ごろから停滞し始めた。(侵攻前から)プーチン大統領が国際秩序に対するリスクを増大させる要因になっていたと考える」

――世界人口は21世紀半ばにもピークを迎えるとの予測があります。

「米国は今後50年間、人口維持に苦労するかもしれない。日欧は人口減の圧力にさらされている。米国は人口増が続く東南アジアなどとの関係強化が戦略的に重要になっていくだろう」

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB153NF0V10C22A4000000/

 

『日本経済新聞』にハル・ブランズ教授の「衰退する大国の罠」というものが載っていました。

 

これは私が最近ブログで書いた戦前に日本の総理になったことのある近衛文麿が第一次大戦の時に書いた「英米本位の平和主義を排す」の中で指摘した現行の世界秩序に不満足な国が戦争を起こすという理論に良く似ています。

 

https://ameblo.jp/mintelligence/entry-12742289256.html

 

ただこの記事をよく読むと少し違う点もあって、第一次大戦の時のドイツや第二次大戦の時の日本が戦争を起こしたのは、ドイツや日本が将来において衰退するからというが、それが正しいとは私には思えない。

 

私はそれよりもやはり近衛が指摘したように英仏が多量の植民地を抱えたために後発国には膨張する土地がなく、そのような世界秩序に対して不満だったことが戦争に至った理由だと思う。

 

それに第2次大戦後の日本や西ドイツの経済成長を考えると、衰退などしていないのでこの理論は何かおかしいし、現在の日本は1990年代のバブル期に比べて遥かに衰退しているが別に戦争をしたいは全く思っていない。

 

確かにロシアは将来において衰退するから戦争を起こした可能性は存在するが、ロシアが低成長になった原因は石油などの資源に過度に依存するからでプーチン大統領が国内にいる有能な人材を活かせていないのが問題である。

 

それよりも、やはり現在のアメリカ主導の国際秩序に不満があったから戦争に及んだと理解する方が無難であると思われる。

 

最後に中国の問題である。

 

中国で経済成長が鈍化して、中国の人口が減っていくことで将来中国が衰退するから、そうなる前に中国は台湾を獲得しようとするだろうとブランズ氏は予想しています。

 

しかし、そのためにチベットや新疆・ウイグル、内モンゴルまでも自国の領土にすることができ、世界第2位の経済大国になることができた現在の国際秩序を本当にロシアのように中国が破壊しようと考えているのでしょうか?

 

中国の人口問題も経済の問題も国内の制度を改革すればどうにかなる問題かもしれず、そのために国際秩序を破壊しようと考えているとは私には思えない。

 

もちろん台湾が簡単に取れると思えば中国はそうするかもしれないが、そう簡単にいかないことを今回ロシアが見事に教えてくれたのです。