フランスのエマニュエル・トッドは以前から自分の本でロシアは世界秩序における「安定勢力」と指摘していたので、今回のウクライナ戦争をどう考えているか私はずっと知りたかった。

 

今回、『文藝春秋』に彼の意見が出ていると知ったので、久しぶりに購入してみました。今回のブログではトッドの意見を参考にしながらウクライナ戦争について考えて見たいと思います。

 

やはりというべきか、トッドもシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授のNATO拡大主犯説を持ち出しています。

 

アメリカのカーター政権で国家安全保障担当補佐官であり、ポーランド出身のスビグニュー・ブレジンスキーの本から「ウクライナ無しではロシアは帝国になれない」という文を引用し、冷戦終了後のアメリカはロシアを米国に対抗できない状態にするために、ウクライナを「武装化」し、事実上のNATOの加盟国のような状態にしてしまったとトッドは指摘します。

 

「米国の目的はウクライナをNATOの事実上の加盟国とし、米国には対抗できない従属的な地位にロシアを追いやることでした。」

 

トッドが引用したブレジンスキーや前回の私のブログで指摘したキッシンジャーやジョージ・ケナンといった冷戦期に活躍したオールド・リアリストとでも呼べる人々は皆それぞれロシアからウクライナを取り上げる危険性を警告しており、特にキッシンジャーなどは熱心に中立化を提言していたのですが、なぜか冷戦後のアメリカの政策担当者はほとんど聞く耳を持たなかったのです。

 

この理由を筆者が考えてみました。

 

ブレジンスキーの本は私も何冊か読んだことがあり、今でも印象に残っているのは日本のことを平気でアメリカの「保護国」と書いていたことでした。

 

これは、ある意味プーチン大統領が、自国内に外国の軍事基地を置いている国は独立主権国家ではないと主張していたのと重なります。

 

日本のことを平気で保護国と書くブレジンスキーがロシアからウクライナを取り上げる危険性を書いていたのは、ロシアは決して日本のような敗戦国ではなかったからなのですが、冷戦後のアメリカの外交担当者はあたかもロシアが冷たい戦争の敗戦国であるかのような処理をし、毎年第2次大戦の勝利を盛大に祝うプーチン大統領の意識とはますますかけ離れたものとなっていったというのが私の推測です。

 

もちろんトッドはロシア側の失敗も指摘しており、その最大のものはウクライナの抵抗を完全に見誤っていたことだと言います。

 

そしてミアシャイマーが「ロシアは米国やNATOよりも決然たる態度でこの戦争に臨み、いかなる犠牲を払ってでも勝つだろう」と予想していることには反対し、アメリカにとってもこの戦争でウクライナが負けることを放置することは許されなくなってきていると不気味な予想を書いているのです。

 

https://www.youtube.com/watch?v=cZaG81NUWCs

ミアシャイマーの日本語訳が出ていたのでリンクを貼っておきます。