現在ロシアのプーチン大統領が果たしてウクライナに侵攻するか、ということが話題になっています。

 

私は以前に「第一次世界大戦はウクライナをめぐる戦いだった」と冒頭に指摘する独創的な本を読んだことがあって、それがかなり記憶に残っていたので今回少し読み返してみました。

 

その本はイギリスの歴史家であるドミニク・リーヴェン教授が書いた"Towards the Flame"というものです。

 

そして次の文章を読んで割と今回の情勢が理解できたのでここに引用してみたいと思います。

 

「1945年にスターリンはガリチア地方を併合しソビエト・ウクライナ共和国に編入した。この結果、ウクライナのナショナリズムの潜在的な脅威がものすごく増すことになった。ドゥルノヴォの予言は正しいことが明らかになった。すなわち、ガリチア地方が無ければ共産主義が崩壊してもロシア、ウクライナ、ベラルーシで東スラブ連邦というものを構成することも可能だったろう。」

 

ロシア人は基本的にロシア、ウクライナ、ベラルーシは相互不可分の関係にあると考えているようです。

 

ところが、このガリチア地方というものはウクライナの西の端に存在するところで、以前はオーストリア・ハンガリー帝国の一部でした。佐藤優氏も『プライム・ニュース』で指摘していましたけれどそれまでロシアに属していたことはなく、第2次対戦後もソビエトとに編入するのが嫌で最後まで戦っていたのです。

 

明らかにこんな地域を編入してしまったのはスターリンの戦略ミスでそのためにウクライナ全体にナショナリズムが及んでしまい、冷戦終了後にウクライナ独立することになってしまったのです。

 

この文章の途中で出てくるピヨトール・ドゥルノヴォはロシア海軍出身の政治家で第一次大戦以前にドイツと戦っても良いことはないと先見性のある覚書を書いた人です。

 

さて、現在のウクライナ問題ですが、実はそれ以前にベラルーシで問題があったのを覚えているでしょうか?

 

ルカシェンコ大統領が選挙で不正を働き、それに怒った国民が立ち上がってかなり激しいデモを起こしていました。ベラルーシ自身では問題を解決できなかったためにルカシェンコ大統領がロシアに頼み込み、どうにか抑え込んだのでした。

 

プーチン大統領は以前から自国や近隣の国で反政府デモが起こるとその国の政府に問題があったのではなく、アメリカなどの外国が介入しているとパラノイア的な発想をする人です。

 

そのロシアのお膝元であるベラルーシにまで外国の影が及んでいると怯え、どうにベラルーシまでは抑え込んだので、この次はウクライナの問題を片付けようと考えたのではないでしょうか。

 

ウクライナがNATOに拡大することを恐れてこのような問題を起こしたというよりも、このままにしておけば、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの関係までもがバラバラになってしまうとプーチン大統領は考えているのではないか。

 

だからといってウクライナに軍事侵攻してウクライナとロシアの一体性を回復できるものなのだろうか。甚だ疑問である。