前々回で日本における「拡大自殺」型の無差別殺人がなぜ現在に多発しているのかを考察した時に、そのような事件が第2次大戦後の高度成長期や日本のバブル時代に発生したことがないと思われる一方、戦前にはそのような事件が発生した事実があることから、このような事件は「周期」的に発生するのではないかとの仮説を立てました。
今回はそのことについてもう少し詳しく考察しようと思います。
ウィリアム・ストラウスとニール・ハウというアメリカ人は”4th Turning”という本でアメリカの歴史の周期性を追求し、アメリカの歴史が80年周期で移行していると主張しています。
その上で彼らは1つの周期である80年を4つに区切り、20年ごとにアメリカがどのような歴史的経過をたどるかを考察しています。
彼らは最初の20年をHigh(絶頂)、次の20年をAwakening(目覚め)、その次をUnraveling (分解)、最後の20年をCrisis(危機)と表現しています。
このアメリカの分類を直接日本に対応させるのは不可能です。というのも、アメリカが第2次大戦の戦勝国でいきなり絶頂期で戦後を迎えるのに対して、敗戦国の日本が戦後すぐにハイになることはあり得ないからです。
それでもこの20年ごとに分ける方法は、世代の移り変わりを反映させることができる点で有効であろうと私は思っています。最初に生まれた世代は20年経つと青年になり、また新たな世代が生まれ、最後の世代は亡くなっていくという具合に歴史は作られていくからです。
そこで終戦の1945年を起点として、それ以前と以後の時代を20年ずつに区切ってみました。
1st 1866-1885
2nd 1886-1905
3rd 1906-1925
4th 1926-1945
1st 1946-1965
2nd 1966-1985
3rd 1986-2005
4th 2006-2025
1st 2026-2045
そもそも私は犯罪に対する専門家でもないし、そんなに犯罪に対して興味は無かったのですが、「歴史の周期性」に好奇心を持っていたところ先の小田急線の事件が起きて、なぜこの頃こういう事件が頻発するのだろうと考えていたら、映画「八つ墓村」を思い出し、こういう犯罪にも「周期性」があるのかもと仮説をたててみた次第です。
日本で最初の「拡大自殺」と思われる鬼松事件が起こったのが1926年、そして横溝正史の『八つ墓村』のモデルとなった津山事件は1938年でどちらも戦前の4th ターニングに区分できます。
そして戦後に同様な事件が初めて起こったのが2001年の池田附属小学校事件で、これは時期的に少し早くて3rdの時期に分類できます。
以後の2008年の秋葉原事件、2019年のカリタス小事件、2019年の京都アニメーション放火事件やこの前起きた小田急事件などは全て戦後の4th ターニングに区分されるのです。
すなわち、拡大自殺型の無差別殺人事件は戦前、戦後を通して、池田小事件以外、80年周期の最後の20年間に集中しているのです。
こういうことを書いているとだんだん気分が落ち込んで来るのですが、一つ希望が持てるのは、あと数年で戦後の80年周期が終了し、次の80年周期の1st ターニングに入るようになっています。
そうなればこの種の犯罪は無くなると私は思います。