太平洋戦争に至る過程で『朝日新聞』を代表とする日本のメディアは軍部の意向を忖度する形で戦争を煽っていたと言われています。
そして日本が戦争に負けた後で、彼らは戦争を煽ったことを心から反省したはずだった。
ところが現在でも『朝日新聞』などは財務省が主導する緊縮財政などの経済政策に対して、それに何ら疑問を抱くことなく財務省の意思を体現する記事を書き続けている。
一体、『朝日新聞』は戦前の何を反省したのだろう?
最近私が読んだ本に『パンデミック以後』というものがあります。
この本は朝日新聞の記者がフランスのエマニュエル・トッドにインタビューを行ったものをまとめたものです。
この本の中でトッドは現在のフランスの状況を「個人はバラバラになり、経済は困難に陥り、生活水準は下がり、製造業は崩壊し続けている。」と日本の経済状態と似たようなフランスの有様を語っています。
また「そうやって外の脅威から人々を保護するのが、国家の役割です。戦争だとか微生物だとか。でも、フランスでは国家は崩壊しつつある。権力を握っているのはマクロン大統領ですらない。」とも語っています。
トッドがこのようにフランスの大統領や国家のエリートを批判していることを読んで私はかなり共感したのだが、トッドに質問している朝日新聞の記者はほとんど反応を示していない。
日本の経済状態はフランスと比べてお世辞にも良いとは言えない(日本の平均的な実質賃金はイタリアよりも下になりG7で最低になってしまった。)にもかかわらず、朝日の記者が日本の現状をきちんと説明しないからトッドの日本経済に対する楽観的な評価は最後まで修正されなかった。
エマニュエル・トッドは家族の在り方がその国や社会に対して広範な影響を及ぼしていることを主張しています。
日本の場合はドイツや北欧と一緒で昔は長男が相続権を持つ直系家族で、そのような社会は「権威主義」に陥りやすいと指摘しています。
だからトッドの主張に一定の理解を示すならば、自分たちの言論が何らかの権威に従っているのではないかという批判的な精神が必要でしょう。
ところが、『朝日新聞』は戦前において軍部の権威に屈して軍部の望むような報道を続け、現在は財務省の主張する緊縮財政を無批判に繰り返しています。
何のためにトッドの意見を聞いているのか理由がよくわからない。ただ『朝日新聞』が戦前と同じく真の権力者の権威に弱いということだけは理解できた。
マスコミもほとんど戦前と何ら変わっていないのです。