ジョージ・フリードマンの新刊 The Storm Before The Calmで彼はアメリカにおける80年周期の波について指摘しています。第2次世界大戦が終了した1945年を起点にしてその80年前の1865年はちょうど南北戦争が終わった年でした。さらに80年遡ると今度はアメリカの独立宣言が行われた1776年に至るのです。

 

この80年周期の波の特徴は、それ以前のアメリカとそれ以後のアメリカは国の性質(国体)が根本的に変化していることにあります。

 

そして1945年を起点として次の80年周期を迎える2025年まであと5年しかないわけですが、次のアメリカがどのように変わっていくかは世界の関心事なのです。

 

フリードマンの本は基本的にアメリカの歴史について書いているのですが、この80年周期説はアメリカだけではなく日本やヨーロッパにも適応できると私は考えています。

 

日本も1945年を起点として考えた場合にそれから80年前はちょうど明治維新の真っ最中で1867年には大政奉還が行われた年に当たります。日本が1945年に戦争で負けて、明治憲法から現在の平和憲法へと国の性質が根本的に変わったように、80年前も江戸の幕藩体制から明治憲法体制へと革命的な変化を遂げたのです。

 

ヨーロッパにおいても1945年を起点にして、その80年前はちょうどドイツが統一に向けて数個の戦争を戦っている途中でした。1866年にはドイツとオーストリア=ハンガリー帝国が戦い、ドイツが勝利してドイツの北半分の統一を果たすのです。

 

そしてドイツの統一を確かなものにしたのが1870年に行われたフランスとの普仏戦争だったのですが、ドイツの統一によってそれ以前のヨーロッパの歴史とそれ以後の歴史は全く違う革命的な変化をもたらしたのでした。

 

さらにヨーロッパの場合、ドイツ統一の80年前は1789年のフランス革命にまで遡ることができるのです。

 

このようにフリードマンの指摘する80年周期説はアメリカの南北戦争から日本の明治維新、さらにはフランス革命まで網羅できるのですが、この説から弾き出されてしまう大きな出来事に第一次世界大戦(1914-1918)が存在します。

 

第一次世界大戦はヨーロッパではグレイト・ウォーと呼ばれるように犠牲者の数からも重大な出来事と考えられていますが、ではヨーロッパに対して第一次世界大戦はそれ以前と比べて革命的な出来事であったかと問えば、かなりの疑問が湧いてくるのも事実なのです。

 

ヨーロッパの戦勝国であるイギリスとフランスは第2次大戦後のように多大な植民地を失うようなこともなく、それまでの帝国を続けていたことに加え、敗戦国のドイツも統一したままヨーロッパの中心に存在し続けるのです。

 

敗戦したオーストリア=ハンガリー帝国はその国内に多数の民族を抱えていたためにその民族がそれぞれ独立国を作り、帝国としてはその役目を終えることになりますが、ヨーロッパの国際関係にはさほどの影響を与えることはありませんでした。

 

第一次大戦で唯一無視できないことはロシアで革命が起こり、ソ連邦が誕生したことです。おそらく第一次大戦で最も重要ではなかったかと私も思います。

 

ただソ連邦も1917年に生まれ1991年に崩壊するという74年間の歴史を考える時、80年周期説はそんなに間違った数字ではないのではないかと感じるのです。

 

ちなみに共産中国ができたのは1949年で今年で71年になります。

 

いずれにしろ、アメリカ、日本、ヨーロッパ共に1945年から80年周期の次の波がやってくる2025年までもうすぐです。