私は現在ジョージ・フリードマンの新刊The Storm Before The Calmという本を読んでいる途中なのですが、少し気づいたことを書いてみます。
この本のタイトルを日本語に訳すと『静けさの前の嵐』という変わったタイトルになります。
なぜフリードマンがこのようなタイトルをつけたかと言えば、この本の主題はアメリカの歴史を周期的にとらえてみようという意図があります。
以前私が訳したことのあるフリードマンの日本に関するエッセイでも、日本の歴史を周期的にとらえており、それをもっと厳密にアメリカの歴史に適用したといっていいでしょう。
https://ameblo.jp/mintelligence/entry-12291124118.html
フリードマンによればアメリカには80年ごとに訪れるinstitutional change(国体的変化)と50年ごとに訪れるsocioeconomic change(社会経済学的変化)の2種類が存在し、この2つの波が2020年から2030年にかけて出会うことになり、次の時代の安定期を迎えるまで、アメリカの政治は激動を迎えるのではないかと予測して、それがタイトルの『静けさの前の嵐』になったようです。
ちなみに現在のアメリカ大統領であるトランプ氏はフリードマンによれば、アメリカの矛盾を解決する人物では無く、アメリカの混乱を象徴しているだけだと厳しく見ているようです。
さてフリードマンが指摘する80年ごとの国体的サイクルと50年ごとの社会経済的サイクルでは、私は80年サイクルの方が重要であり、このサイクルはアメリカだけでなく、世界的に応用できる普遍的なものではないかと考えています。
第2次世界大戦が終わった年である1945年を起点として、それより80年前はアメリカで南北戦争(1861-1865)が戦われていた時代でした。さらに、その80年前はアメリカで独立宣言(1776)が出された時代と重なるのです。
そして1945年から80年経過した2025年ぐらいからアメリカでは重大な出来事が起こるのではないかとフリードマンは予測するのです。
実は日本にもこの80年周期は当てはまるのではないかと考えていて、フリードマンが起点とする1945年から80年前は、ちょうど明治維新の激動期で大政奉還が行われたのが1867年になります。
さらにネットで調べていたら日本にも80年周期説を以前から唱えている高橋浩一郎という人物がいて、その人は明治維新から80年前に寛政の改革が行われ、その80年前に享保の改革、さらに80年さかのぼれば徳川家康の江戸幕府まで到達できるというのです。
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/092600296/
この80年周期説を用いれば、日本で明治維新が行われている頃にアメリカで南北戦争が行われており、松平定信が江戸中期に寛政の改革をやっている時代にアメリカで独立宣言が出されたことになります。
ではこの80年サイクルはヨーロッパには当てはまるのでしょうか?
第2次世界大戦が終了した1945年から80年前、ちょうどアメリカが南北戦争を行い、日本が明治維新を実行中の頃にドイツではプロイセンがオーストリアと1866年に戦い勝利を収め、北ドイツ連邦が誕生したのでした。そして1870年からビスマルクはフランスと戦い、勝利を収めドイツを統一させることに成功したのです。
ではドイツ統一から80年前の欧州で何があったかと言えば、あの有名なフランス革命が1790年に行われているのです。
ということはフランス革命とアメリカの独立宣言と寛政の改革は80年周期説で固く結ばれているのです。
わたしにはこれが偶然だとは思えません。
ロシアで革命が起こったのは1917年で、ソビエトが崩壊したのは1991年で74年間共産党の政権が続いてきました。80年よりは短かったですが、そんなにずれていないのではないかというのが筆者の感想です。
共産中国が建国されたのが1949年で80年を足せば、およその寿命がわかります。
そして日本でも1945年から80年後の全くこれまでとは別の世界に向けて『静けさの前の嵐』を経験していくことになるのでしょう。