松本厚二氏が書いた『韓国「反日主義」の起源』という4000円以上もする高価な本を久しぶりに読みました。

 

私はこれまでかなりの数の韓国に関する本を読んできましたが、この本を読んだ時の衝撃はそれまでの経験を一気に越えるコペルニクス的展開を十分に味わえるものでした。

 

日本の敗戦により独立を達成した韓国は日本の支配について「世界史上例を見ない極悪の日帝」と評しているわけですが、本当にそれが正しかったのならば、総督府などに務めて日帝の手先となった朝鮮人を徹底的に粛清しなければならなかったはずです。

 

松本さんはナチスに協力したフランス人1万人を戦後のフランスが処刑することにより、新たに出発するフランスのレジティマシーを獲得したことを指摘しています。

 

韓国はフランスがやったようには決してしませんでした。驚くことに戦後の李承晩政権は産業界、法曹界、行政、軍事に至るまで、日帝時代に出世していた韓国人をそのまま持ってきたのです。

 

例えば印泰植という人は、1902年に生まれ、東北帝大を卒業し江原道洪川税務署長、同財務部長を務め、光復後財務部司税局長となり、管財庁長を経て1956年に財務長官となった次第です。

 

このような現在の日本人から見てもエリートだと思わせる経歴を持った多数の韓国人が戦後の韓国を指導していくこととなり、全くと言っていいほど大日本帝国とのけじめをつけていないのです。なぜこんなことになってしまったのかを考えれば松本氏が書かれているように「韓国国民は日本の統治をそれほど悪いものではなかったと考えるしかない」のでしょう。

 

では、なぜ日本から独立した韓国が、併合している時とほとんど変化がなかったのでしょうか?

 

韓国は日本が1894年の日清戦争に勝利することによって始めて中国からの独立を果たすことになります。

 

こう書くと朝鮮が中国から簡単に独立することができたと考えがちですが、中国に事大していた李氏朝鮮の500年間はそれがある種の文明のようなものとなっており、それを独立国家仕様のソフトに変換するには、新たな文明を作るぐらい大変なものではなかったのかと松本さんは問います。

 

例えば言葉です。

 

李朝の知識人は漢文を中国式に読み書きすることによってその役割を果たしていたのですが、果たして近代に独立国家となる韓国で従来の漢文重視でうまくやっていけるのでしょうか?

 

これを成し遂げたのが、ハングルを仮名と勘違いし、漢字ハングル交じり文を作った福沢諭吉でした。現代韓国語の語順が日本語に似ているのはこの時代に朝鮮語が日本語を元に作られたからなのです。

 

日清戦争、日露戦争、日韓併合の時代は、それまで朝鮮の文明が中華の枠組みに従って作られていたものが、現代韓国語からもわかるように、その文明が日本のものを基礎として組み立てることによって韓国文化や韓国経済が豊かになっていったのでした。

 

続く。