前回はアメリカの蒋介石政権に対する理想主義の変遷を見てきたわけですが、現在のトランプ政権の貿易戦争においても全く同じようなパターンが見受けられます。
トランプ大統領の中国製品に次から次へと関税をかける態度に隠れがちですが、アメリカの議会においても明らかな変化が見られます。
評論家の宮崎正弘さんは、「議会で『中国制裁』を騒いでいるのは、何も共和党の対中強硬派だけではない。民主党のチャック・シューマー上院議員(ニューヨーク州)や、同党のナンシー・ペロシ下院院内総務(カリフォルニア州)など、どちらかといえば、リベラルな議員の方が過激である。
驚くべし。米国連邦議会の方が、ドナルド・トランプ大統領より対中強硬なのである。」と書いておられます。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180803/soc1808030011-n1.html
あれだけ散々中国を甘やかしていた、アメリカ大統領や議会がいつのまにかに反中国でのコンセンサスができてしまっていたのです。
なぜこのようになってしまったのかという仮説ですが、おそらくはアメリカの中国に対する理想主義が破綻して、アメリカ人の中国に対する希望が幻滅に変わってしまったのです。
冷戦後のアメリカの中国に対する理想主義は、「アメリカが経済的に共産中国に対して協力すればいずれ民主化するに違いない」というものでした。
アメリカの協力もあって中国は日本を抜いて世界第2位の経済力を獲得しましたが、肝心な民主化の方には全く変化が無く、習近平政権になってからはそれまであった任期制も蹴飛ばしてしまったのです。
おまけに南シナ海での不法な埋め立てや、アメリカを技術的に追い越してみせるという「中国製造2025」なども発令され、アメリカの中国に対する理想主義はここに至って完全に破綻したのです。
前回紹介したアメリカの外交官、ジョン・マクマリーは1935年の秋にこう書いています。
「だから米国政府がとってきたような、ヒステリックなまでに高揚した中国人の民族的自尊心を和らげようとした融和と和解の政策はただの幻滅をもたらしただけだった。」
ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(息子)、オバマ大統領の対中政策が幻滅に変わってしまったのが、トランプ大統領の関税攻撃であり、議会の反中コンセンサスなのです。