アメリカのトランプ大統領がいよいよ中国に対する関税を発動し、それに対抗して中国もアメリカの商品に関税をかけるという「貿易戦争」の色合いが濃厚になってきました。
果たして、この貿易戦争に勝者はいるのでしょうか?また、この戦争によって習近平の中国はどのぐらい打撃を受けるのでしょうか?究極的には中国共産党の崩壊といった事態はあり得るのでしょうか?
今回はこのような問いに答えるつもりで書いてみます。
近代における米中関係を眺めてみると、アメリカの理想主義的な中国政策が破綻して、それに連れて中国の体制が転換しているという衝撃的な事実が明らかとなります。
まずはアメリカが清朝に対してとった政策をみてみましょう。
アメリカのある宗教指導者はアメリカが清朝に対してとる政策についてこう書いています。
「支那は急速に愛国的、文明的となるであろうから、米国はその進歩を助け、支那の門戸開放と領土保全を援助すべきである。」
(『日本とアメリカ 戦争から平和へ』上 長浜浩明 136)
「門戸開放と領土保全」がこの時代のアメリカの中国に対するスローガンとなります。
当初、アメリカのこのような政策は口先だけのスローガンでしたが、日露戦争の後のタフト大統領の強引なドル外交によってその目的を達成しようとしました。
ただタフト大統領のやり方があまりにも稚拙で目的とは正反対の事態を招くのです。
まずタフト大統領は満州に対して割り込もうとしますが、これは逆に日本とロシアの融和を招きます。
そこでアメリカは中国本土に狙いを定めます。具体的には漢口鉄道の借款に加わろうとするのです。
ただこの鉄道については中国では不人気で、長浜さんの前掲書では次のように書かれています。
「米国は気にもせず英独仏と共に清国に圧力をかけて調印させたが、この調印が革命に拍車をかけた。」
つまりタフト大統領のドル外交は「領土保全、機会均等」どころではなく、列強各国の利害の衝突を加速させ、ついでに辛亥革命までに至ってしまったのです。
次回はフランクリン・ルーズベルトの対中政策について書いてみます。