元自衛隊の情報士官だった鈴木衛士さんが書いた『北朝鮮は悪じゃない』という本を読みました。
この本は自衛隊が北朝鮮の内情をどのように分析しているのか、またカウンターパートであるアメリカの情報官とどのようなやり取りをしているかなどの興味深い記述があり、新書では久々のヒット作品に巡り会えたと思っています。
今回のブログではこの本に書かれているアメリカと北朝鮮の関係に絞って書いてみたいと思います。
まず鈴木さんは韓国と北朝鮮という朝鮮半島の「南北問題」は究極のところアメリカと中国の問題に帰結すると指摘しています。
「たとえば、北朝鮮が目論む南北統一は中国の支援無しには果たし得ないでしょうし、北朝鮮の体制崩壊によって韓国主導で南北統一がなされるとしたら、ここには米国が深く関与するはずです。したがってこの『南北問題』は、北朝鮮という当事者ではなく、中国と米国が問題解決の鍵を握っていることから、つまるところ『米中問題』なのです。」
このことは私が以前からこのブログで書いてきたように、近代以降、朝鮮半島の体制を決めてきたのは朝鮮半島を取り囲む外部勢力の力関係であり、現在では米中関係のあり方で決まるということと一致します。
そこで北朝鮮とアメリカの関係がさらに悪化して戦争の可能性が高まった時に各国がとる行動は論理的に次のようになるはずです。
「恐らく、米国の攻撃がさらに切迫すれば、中国は座視しないという態度を明らかにするはずです。かといって、全面戦争になるのだけはお互いに避けようとするはずですから、いずれかの段階で必ず米中協議が行われると考えられます。」
この部分までは私も鈴木さんの考え方と一致します。朝鮮戦争の愚を避けるためにはアメリカにとってどうしても中国の了解が必要なのです。
それでもアメリカが北朝鮮に対して強硬に出るならば、鈴木さんは中国は次のような行動にでるのではないかと書いています。
「北朝鮮が抵抗するような場合には、米国の軍事攻撃に先んじて中国が北朝鮮に軍事介入する可能性が高いと考えます。」
朝鮮半島の専門家がわりと簡単に中国が金正恩の首を簡単にすげ替えることができると書いているのをよくみかけますが、本当にそれは実行可能なのだろうかという疑問が私には以前からあります。
その理由を次に書いてみたい。