佐藤優氏と手嶋龍一氏の『独裁の宴』という対談本を読み終えました。
この本の中で佐藤優氏が語る北朝鮮とアメリカの核危機をめぐる政策論に少し疑問を感じたのでここに記しておきます。
佐藤氏はこの本の中で、日本にとって厄介な問題を引き起こすとして次のように書いています。
「一つは、『Let’s go together』とアメリカの先制攻撃に同調するように求めてくること、もう一つは『アメリカ本土に届くICBMの開発を断念すれば、アメリカは北朝鮮と妥協する』というシナリオの受け入れを要求してくることです。」
前者の問題は私にとっても納得できますが、後者の北朝鮮がアメリカに届くミサイルを作らない代わりに何らかの合意を米朝で結ぶことは日本にとってそんなに危険なことでしょうか?
確かにアメリカが北朝鮮をある一定の条件で核保有国として認めることは日本にとって気分の良いものではありませんが、北朝鮮がアメリカに届かないミサイルを放棄したことにより日本にとってのアメリカの「核の傘」は破られてはいないのです。
なぜなら、そのような状況で北朝鮮が日本に対して核の恫喝や実際に核兵器を投下してもアメリカは自国の都市の犠牲を考慮せずに北朝鮮に対して核兵器で反撃することを期待できるからです。
日本にとって最悪なのは、北朝鮮がアメリカに届くICBMを完成させて、それらを含めてアメリカが北朝鮮を核保有国として認めてしまうことです。
そうなった場合、北朝鮮はアメリカからの反撃を恐れることなく、日本や韓国を核兵器で恫喝することができるでしょう。
北朝鮮がアメリカに届く核ミサイルを持っていることで、アメリカが日本のために核兵器で反撃しようとしても、今度はサンフランシスコやニューヨークのことを気にかけなくてはならないからです。
このような観点で見てみれば、中国やロシアの核兵器に対してアメリカの日本に対する「核の傘」はある意味では破綻しているのですが、現在において中国やロシアが日本に対して核兵器による恫喝を行なってはいません。
ロシアや中国も非核国の日本に対して自国の核兵器で恫喝する危険性は十分認識しているのでしょう。
しかし、そのような自制は本当に北朝鮮に期待できるのでしょうか?
だから日本にとって北朝鮮がアメリカに届くミサイルを完成させることは、アメリカと同様に脅威なのです。
それに比べれば、北朝鮮がアメリカに届くミサイルの開発を断念してなんらかの合意を結ぶことは日本にとって現状と比べて格段不利になるわけではありません。
一方、佐藤優氏のようにアメリカに対して北朝鮮の核は日本として一切認められないと強く主張すれば、逆にアメリカから Let’s go together と北朝鮮に対する先制攻撃に参加させられてしまう公算が大です。
