アメリカのヘンリー・キッシンジャー元国務長官は以前から現在の東アジアの情勢をドイツでビスマルクが政権を握っていた頃の東部の情勢と重ね合わせて見ています。
最新作のWorld Order という本でも次のように書いています。
「日本と同盟関係にありながら中国とのパートナーであるということは、ビスマルクがオーストリアと同盟しながらロシアと条約を結びバランスを取ったことに似ている。逆説的にこのような曖昧さがヨーロッパでの力の均衡が柔軟性を持ちながら保たれた要因となった。そして透明性の名の下にそれを放棄したことが第一次大戦に結びついた。」
World Order p232
確かにこれまではこのような曖昧な関係が東アジアにおいてうまく作用してきたことを私は否定しません。
しかしながら、現在中国が南シナ海や東シナ海で拡張的な動きを見せ東アジアで覇権をとる姿勢を明確にするとこの「ビスマルク」体制は力の均衡を喪失し、とても不安定になっています。
例えば、これまでアメリカの同盟国と当たり前に思われていた韓国やフィリピンが中国に擦り寄り、公然と両天秤政策をとることにも現れています。
おそらく彼らはアメリカの言うことだけを聞いていても自分達の国益を達成できないと考えた結果でしょう。
そしてオバマ大統領の口先だけのPivot政策では中国の拡張政策は全く止められませんでした。
アメリカ海軍大学のジェームズ・ホルムズ教授はオバマ大統領の「航海の自由」作戦は単なる「無害通航」にしかなっておらず、逆に中国の埋め立てを法的に認めてしまっていると痛烈に批判しています。
このようにニクソン大統領とキッシンジャーが作った東アジアの「ビスマルク」体制は存続の危機を迎えているのです。
