前回のブログでトランプ次期大統領はケナンが言うところの「中国に対するセンチメンタリティー」があまり存在しないから従来とは違う対中政策が期待できるのではないかと書きました。

 

それから間もない頃トランプ次期大統領は台湾の大統領と電話会談を行い、それはトランプの外交的無知からくるものなのか、それとも根本的な対中政策の転換なのかという議論が巻き起こっているところです。

 

トランプ次期大統領が東アジアでどのような外交政策をとるのか、ネットで色々な英語の記事を読んでいたら一つ興味深い記事を発見しました。

 

それはニアル・ファーガソンが『アメリカン・インタレスト』に書いていた「ドナルド・トランプの新世界秩序」http://www.the-american-interest.com/2016/11/21/donald-trumps-new-world-order/という記事です。

 

この記事でファーガソンはトランプ次期大統領はセオドア・ルーズベルト大統領のような「現実的」外交を追求するだろうと予測しています。

 

私は彼の目のつけどころは面白いとは思いましたが、彼の日本やドイツに対するネガティブな見方とキッシンジャーの伝記を書いているゆえなのかはわかりませんが、中国に対する融和的な姿勢からこの記事の予測がただ単に自分の願望を反映したものにしか読めませんでした。

 

特にひどいと感じたのはセオドア・ルーズベルトの外交とフランクリン・ルーズベルトの外交は全く正反対なのにもかかわらず、同じように扱っていることです。

 

そこで今回はセオドア・ルーズベルト大統領とフランクリン・ルーズベルト大統領の外交政策の違いからトランプ次期大統領の外交政策を予想してみたいと思います。

 

ちなみにアメリカの歴史にあまり詳しくない読者のために説明すると、セオドア・ルーズベルト大統領は日露戦争を仲裁した人物で、フランクリン・ルーズベルトは日本を太平洋戦争戦争に追い込んだ人です。

 

セオドア・ルーズベルトの外交政策は現代の「リアリスト」学派とかなりの共通性があります。両者ともアジアやヨーロッパというアメリカが利害を有する地域で一つの国家がその地域を支配することを拒否するのです。

 

いわば「地域覇権」を許さないというのが彼らの立場です。だから日露戦争においてセオドア・ルーズベルト大統領は強国ロシアに対して日本を応援する立場にはなりましたが、日本はロシアから賠償は取ることができませんでしたし、日本がロシアに勝って有頂天にならないように「グレート・ホワイト・フリート」と呼ばれる16隻の戦艦を日本に派遣したりもしたのです。

 

一方フランクリン・ルーズベルトの外交政策は「四人の警察官」と呼ばれるもので、アメリカ、イギリス、ソ連、中国がそれぞれの地域で責任を負い、4大国の協調で世界の平和を維持するというものです。

 

果たして自分の国を完全に統治することができない当時の国民党の中国が東アジアの警察官の役目を果たせるかどうかはともかく、セオドア・ルーズベルトとフランクリン・ルーズベルトの一番の違いはその地域の大国に「地域覇権」を許すかどうかにあります。

 

ここで現在の対中国政策に戻ります。

 

習近平政権がフランクリン・ルーズベルトの再来を望んでいることは間違いないでしょう。彼の主張するアメリカと中国の「2大国関係」や「アジア人のアジア」などを考えれば、中国が東アジアにおいて覇権国となり、警察官の役目を果たしながらアメリカとは友好関係を維持するのです。

 

そのためにはアメリカ軍は東アジアから出て行ってもらわなければならないのです。

 

一方、ニアル・ファーガソンが主張するようにトランプ次期大統領がセオドア・ルーズベルトのような外交姿勢を貫くのなら、「地域覇権」を許さないという立場からも中国の東アジアにおける覇権には反対で、反中姿勢を取らないとおかしいのです。

 

だから本当にニアル・ファーガソンがトランプ次期大統領の外交をセオドア・ルーズベルトのようになると予測しながら日本が負け組になると予想するのは論理破綻が甚だしいのです。

 

最後にトランプ大統領とセオドア・ルーズベルト大統領の共通点を少し補足しておきます。以前にも書いたことですが、今回の選挙で大統領、上院、下院共に共和党が総取りしましたが、前回に共和党がそれを達成したのはマッキンリー大統領の時でしたが、この大統領は暗殺されてしまい代わりに大統領となったのがセオドア・ルーズベルトでした。

 

セオドア・ルーズベルトにはアリスという美人で聡明な娘がおり、グレート・ホワイト・フリートと共に日本にやってきて明治天皇に接見したりもしています。これなどもトランプ次期大統領の娘のイヴァンカと重なったりもするので、ニアル・ファーガソンの目の付け所はいいと思ったのですが、彼の結論とは逆になります。