Fredrik Logevall というハーバード大学教授が書いた Embers of Warというヴェトナム戦争を描いた本を現在読んでいます。

 

この本を読んでいるうちにある仮説が浮かんできたので書き留めておくことにしました。

 

それはなぜ朝鮮戦争において韓国は北朝鮮からの攻撃に耐えることができ、統一には失敗しましたが経済はますます発展していったのに対して南ヴェトナムは北ヴェトナムの攻撃に耐えきれず吸収されてしまったのだろうかという疑問です。

 

韓国も南ヴェトナムもアメリカに支援されていたという条件は同じでした。

 

この問題に対してエマニュエル・トッドの「中間層が歴史を決める」というテーゼを導入したら割と明確な答えが見えてきます。

 

韓国にあって南ヴェトナムに無かったのは白善燁将軍(釜山を守り抜いた朝鮮戦争の英雄)や朴正煕大統領の存在でした。

 

この2人の経歴はよく似ています。2人とも日帝時代に裕福ではなく授業料のかからない師範学校を卒業し、満州の陸軍士官学校で学んでいるのです。

 

これらの優秀な中間層出身の指導者がいたために韓国は救われ発展できたのでした。

 

台湾の李登輝総統も父親は警察官で決して上流階級出身ではありません。それでも旧制高校から京大にいくという能力の高さを示し、最後には台湾総統の地位についているのです。

 

トッドが日本の明治維新について「上級武士でなく下級武士が活躍した」と書いていましたが、朴正煕や李登輝にも同じことは言えると思うのです。

 

一方フランスの植民地であるヴェトナムでは「初等教育では1939年においては45万人だったものが1944年には70万人にまで増えているが、それでも学齢期に達した子供の14%にしかならなかった。」とLogevallは書いています。

 

つまり日本の植民地支配はある程度の中間層を創出できたのに対して、フランスではそれがなかったために南ヴェトナムの崩壊を生んでしまったのではないでしょうか。

 

南ヴェトナムを支えようとする中間層がいなかったために、マルクス主義とナショナリズムを背景とする北ヴェトナムの攻勢に防御ができなかったのです。

 

日本にとっても北朝鮮が韓国を吸収すれば非常に面倒だったという意味で、日本の「自由」を守ってくれたのは朝鮮に作った師範学校や満州に作った士官学校のおかげだったのです。

 

この仮説が正しかったかはEmbers of War を読み終わってから書いてみようと思います。