今回のテーマは「同盟関係」についてです。
元財務官僚の高橋洋一氏は『日本はこの先どうなるか』という本の中で、同盟関係について次のように説明しています。
「同盟関係を結ぶ相手は、どこの国でも良いというわけではない。その時点で、最も力のある国と同盟を結ばなければ、意味をなさないのである。弱い国同士で同盟を結んだところで、単なる弱者連合が生まれるに過ぎず、お互いに足を引っ張りあう可能性があるためにむしろ危険だ。」
確かに同盟は強い国と結ぶにこしたことはありませんが、この説明ではなぜ国家同士が同盟を結ぶ理由が書いていないために内容が不十分です。
ではなぜ国家というものは同盟関係を結ぶのでしょうか。
アメリカの元国務長官であるヘンリー・キッシンジャーは同盟というものは共通の危険や脅威を通じて結ばれるものであり、同盟関係は基本的に「仮想敵」を想定していると書いています。
私もこのキッシンジャーの定義が正しいと思っています。そこでこの定義を頼りにして日本の明治維新以後の同盟関係を見ていきたいと思います。
日露戦争の直前に結んだ日英同盟はロシアを仮想敵にしていました。ロシアが満州方面に南下してくることに脅威を感じていた日本と現在のアフガニスタン方面でグレート・ゲームと呼ばれるロシアとの角逐に悩んでいたイギリスと利害が一致したために結ばれたものでした。
日露戦争で日本が勝利したことで、ロシアを仮想敵としていた日英同盟はその存在意義を低下させます。そこで日英当局は第2回の改定で今度はドイツを仮想敵にすることで合意してしまうのです。
そして第一次大戦で日英同盟の仮想敵だったドイツが滅ぶと、ますますその存在意義が問われるのでした。(日本は第一次大戦において陸軍は派遣していませんが、海軍は派遣しています。)
その当時の日本としてはアメリカを仮想敵として日英同盟を続けるといった手段も考えられたはずですが、イギリスにはそのような気はさらさら無く、アメリカが日英同盟の継続に徹底的に反対したためにワシントン会議の時に日英同盟は無くなります。
ちなみにイギリスのチャーチルは「日英同盟に対するアメリカの強い反発を忘れるべきではないと忠告し、同盟継続に反対した」とアントニー・ベストは『大英帝国の親日派』という本に書いています。
今は亡き岡崎久彦元外務官僚などの保守派の一部の人が、日本が第一次世界大戦に陸軍を派遣したら日英同盟は存続できたと主張しますが、筆者は全然納得できません。
チャーチルが言うように日英同盟の存続の鍵を握っていたのはアメリカであり、日本が陸軍を派遣していてもアメリカの反対は変わらなかったでしょう。
仮に日本が欧州に陸軍を送り、あの塹壕戦で多数の犠牲者を出した挙句に日英同盟が廃棄されたら、イギリスに裏切られたと陸軍首脳がぶち切れる事態を招いただけだったでしょう。
続く
