私は現在イギリスの歴史家ドミニク・リーベン教授のTowards The Flame という、ロシアがなぜ第一次世界大戦に参戦したかを分析した本を読んでいます。

この本の感想はいずれこのブログに書こうと思っていますが、今回はこの本を読んでいて少し気になったことを書いてみます。

それは現在ロシアの大統領であるプーチンが一体どういう目的を持って戦っているかが、私にはもう一つ理解ができないのです。

それを解く鍵になるかもしれません。

第一次大戦に参戦したロシアはドイツに叩きのめされ、革命によってロマノフ王朝は潰れてしまいます。

ボルシェビキが政権を握ったロシアはすぐにドイツと交渉を開始し、1918年3月3日にブレスト-リトフスク条約を結びます。

アメリカのキッシンジャー元国務長官の『外交』という本にはこの条約はとてもひどいと書いていましたが、どういう内容かは書いていませんでした。

リーベン教授の本には、その内容が書かれているのですが、それを読んで私は愕然としました。条約の内容は次のとおりです。

「ロシアはフィンランド、バルト諸国、ポーランド、そしてジョージア(グルジア)を失った。ドイツはクリミアを占領した。ルーデンドルフはクリミアを将来のドイツの植民地にすることを考えていた。さらにモスクワはウクライナの独立を認めざるを得なくなった」

ロシアのプーチン大統領はこの文章の中で触れられているジョージアについては西側につこうとした政権をたたきつぶし、クリミアは奪還し、ウクライナには現在ちょっかいを出している途中です。

もちろんブレスト-リトフスク条約はドイツが第一次大戦に負けたためにパリ講和会議で破棄させられるのですが、なぜかプーチン大統領はこの幻の条約を無効にすることに努力を傾けているようなのです。

しかしながらブレスト-リトフスク条約にあるバルト諸国とポーランドはNATO加盟国なのでこれを中立化させることも簡単ではありませんが、NATOを破棄しそうなトランプ候補をプーチンが応援しているのを見ても、バルト諸国とポーランドの中立化まで視野に入れているのかもしれません。

アメリカとロシアの対決は簡単には終わらなさそうです。