以前にCNNのファリード・ザカリアの番組で彼がお勧めの本だと紹介していたのが、マリー・サロテという人が書いた『崩壊』(The Collapse)でした。

この本はいかにして米ソ冷戦を象徴するベルリンの壁が1989年に崩壊したのかを当時の資料やインタビューによって構成されています。

この本はそのまま読んでも面白いのですが、果たして東アジアでもヨーロッパのようなことが起こるのだろうかという視点から読んでみたらいくつかの気になる点があったので報告してみます。

当時の東ドイツの人々が体制に不満を持っていたのは、基本的に自由がない社会で経済が低調なことと、意外にも環境問題への対応でした。サロテは次のような例を挙げています。

「化学や工業プラントの近辺では毒性の廃棄物が地域の空気や水に排出され、建物を黒くするだけでなく、住民の皮膚や肺も汚していた。ライプツィヒの南にあるメルビスという村はヨーロッパで最も汚い街であると指摘する人もいた。その視界は悲惨なものでしばしば自分の手も見えないこともあった。64人のライプツィヒの住人はこの問題が東ベルリンの党指導部からいつも忘れられ無視されると訴えていた。」

この文章を読んで現在の中国を想像するなと言われても無理です。

果たして一党独裁の国は環境問題を解決することは可能なのでしょうか。これまでの私が読んだ数々の中国崩壊論において環境問題についての考察はほとんどなかったので、この点に気づかされれたことは大変有意義でした。