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前回マリン・カツサが書いた『コールダー・ウォー』という本の中で、サウジアラビアの王政がイスラム過激派に乗っ取られた上にイランに対して戦争を仕掛けたり、西側に対して石油を売らなくなるという不気味な予想を紹介しました。

私もこの可能性があることは否定しませんが、別のルートによってサウジの王政が転覆する場合があると考えています。

それはアメリカがイランに対して爆撃を行なった場合です。そうなった時にイランが直接アメリカに報復するのでは無く、アメリカの同盟国であるサウジに手を出す場合です。

なぜこのような場合が考えられるかといえば、歴史的に似たような状況が存在したからです。

次に紹介する文章はアメリカの保守系の評論家であるウォルター・ラッセル・ミードが 『The American Interest 』に書いたものです。

「イランを擁護するアメリカ政府内外の人々の言い方は基本的にこんなものである。イランはアメリカにとってこの地域で最も可能性のあるパートナーでありイランとアメリカの利益は戦略的に同調している。自分をアメリカの同盟国と呼ぶサウジアラビアは過激な宗教を輸出し、後退した政治体制にしがみついている。サウジの王朝は、人民が欲深く、腐敗した無能な王朝に疲れた時に破裂するような時限爆弾のようなものである。それとは反対にイランは多くの教育された中間層を抱えている。現在のイランの体制は欠陥を抱えているかもしれないが、じきに力が働いて他のアラブ諸国よりもはるかに現代的で民主化された体制になるだろう。核問題でアメリカとイランの敵対関係を終わらすことは危険な論争を終わらせる以上なものがある。それはもっと広くもっと実りの多い扉を開けることになるのだ。」

ミードがどう思っているかはよくわかりませんが、私はこの内容が完全に正しいと思っています。

実はこの文章の中で、イランと書いているところを大日本帝国に置き換え、サウジアラビアと書いてある部分を蒋介石の中国と置き換えたら、戦前の東アジアの情勢と重なって見えてくるのです。

戦前、アメリカは全然民主的でない蒋介石の中国と組んで日本と戦いました。日本は敗れましたが、結果はアメリカが望んだものだったのでしょうか。

中国大陸では蒋介石の国民党と共産党が戦い始め、より過激な共産党が大陸を支配してしまったのです。

さらに1950年からは朝鮮戦争が始まり、あろうことかアメリカと中国が殺し合いを始めるようになりました。

片岡鉄哉氏は『さらば吉田茂』という本の中で、当時アメリカでは日本に対して We fought the wrong enemy.(間違った敵と戦った)と言われてたことを記しています。

アメリカがイランを爆撃したらおそらくこれと同じような状況が生まれる可能性があります。

イランの報復で弱ったサウジアラビアの王政がビン・ラディンの仲間によって転覆されアメリカにテロを仕掛けるかもしれません。カツサが言うように西側に石油を売ることを拒否するでしょう。

一方、イランは日本と同じようにアメリカに負けるかもしれませんが、イランは自力で民主化を達成した国です。(イギリスとアメリカによって転覆されてしまいましたが)戦争に負けても経済制裁が解除されればいずれ中東の大国に浮上してくるでしょう。

そうなった時にアメリカはWe fought the wrong enemy.とまた嘆くのでしょうか。

私はワシントン会議以後、アメリカが蒋介石の中国を偏愛し、民主的だった日本を袖にした理由が未だによく理解できないでいます。

それと同じぐらいに現在のアメリカがサウジアラビアの体制にあまり文句を言わず、イランの体制を嫌悪することも全く理解できません。

不合理な政策は不合理な結果をもたらすだけです。
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