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これからもアメリカとサウジアラビアは戦略的な関係を安定して築いていくことができるのでしょうか。
『結局、世界は石油で動いている』という本の中で、著者の佐々木良昭さんはサウジアラビアを「絶対王政」と規定しており、その呆れるほどの格差社会を次のように指摘しています。
2013年5月にサウジアラビアのファハド王子が、フランスのパリ郊外にある「ディズニーランド・パリ」で豪遊し3日間で19億5千万円を使ったそうです。
一方で、大産油国で豊かなはずのサウジアラビアでも人口の1/4が貧困層だという厳しい現実が存在します。
マリン・カツサも『コールダー・ウォー』の中で同じようなことを指摘しています。
サウジでは20歳以下が人口の60%を占めるのですが、若い大人の40%がちゃんと就職できないのです。
おまけにサウジアラビアにおいては「政党も存在しないし、組合も無いし、王族が関与している慈善団体以外の社会的な組織も存在しない」と書いています。
佐々木さんもカツサもサウジアラビアがとても「脆弱」な体制であることについて一致しています。
その上でカツサはサウジアラビアの暗い将来について予測しています。
サウジの王政が滅んだらそれを埋めるのは「イスラム主義者」しか存在しない。しかしサウジアラビアのイスラム主義者はエジプトなどの穏健派とは違うワハビ派と呼ばれるイスラムの中でも最も反動的な宗派であり、ビン・ラディンと同類の人々である。
そのような者達がサウジで政権を握ったらイランと戦争になる確率は跳ね上がり、彼らは西側に石油を売ることをやめてしまうかもしれない。
1973年の石油ショックで石油の値段は300%にも跳ね上がった。このような事態が起これば1バレル300ドルになるかもしれないと書いています。
このカツサの予言を裏付けるようにThe National InterestによればサウジアラビアでISによると思われる自爆テロが連続して発生しているようです。
http://nationalinterest.org/feature/the-who-what-why-isis-bombings-saudi-arabia-13047
このようにサウジアラビアの体制は決して安定しているとは言えず、アメリカとサウジアラビアとの関係も将来にわたって安泰というわけにはいかないのです。
「日本に輸入される原油は、その80%以上をサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、クエートといった中東地域に依存している」と佐々木さんは書いており、日本としてもサウジアラビアの状況に無関心ではいられません。
日本の報道ではどうしても安全保障に対する報道が中国に集中するきらいがありますが、中東の問題の方がはるかに日本の国益に直結するのではないかと私は思っています。


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