日経ビジネス・オンラインにあったオーストラリア国立大学のガバン・マコーマック教授のインタビューは安倍総理の日米関係を占う上で大変参考になります。

このインタビューで教授は安倍総理の歴史認識がいずれアメリカと衝突をきたすのではないかと危惧を抱かれているようです。

この点について私はそんなに心配していません。少し説明してみます。

マコーマック教授が語るように安部首相の政策は確かに「矛盾」しています。一方ではアメリカの言う通りに集団的自衛権、沖縄普天間基地移設問題やTPPを受け入れておいて(教授はこれをアメリカの属国化と厳しい表現を用いています)、他方では靖国参拝や歴史認識の問題では「戦後レジーム」からの転換をアメリカの反発がありながらも進めていっている点です。

そこでアメリカの求める政策を遂行している間は日米の衝突はないかもしれないが、いずれ安部首相の歴史認識の問題が衝突の種になるのではないかと教授は心配しているようなのです。

じつはこの問題を考える上で安部総理と対照的なのが鳩山由紀夫総理でした。鳩山総理の歴史観は安部総理とは正反対でした。鳩山首相は靖国神社に参拝しなかったですし、慰安婦問題や南京大虐殺でも中韓が主張することをそのまま受け入れているかのようでした。

鳩山総理の歴史観はアメリカからみても満点に近かったはずです。では鳩山政権下で黄金の日米関係が達成できたのでしょうか。

そんなことは起きませんでした。彼は基地問題でつまづいて無残な形で首相の座を下りなくてはなりませんでした。

鳩山政権の失敗でわかったことは、日米関係において歴史認識の問題よりもはるかに「利害関係」の方が重要だったということです。

マコーマック教授は、安部総理が靖国参拝した時にアメリカ政府がdisappointed(失望した)という強い言葉を使ったことに日本人は注意を喚起すべきだといいます。

それはその通りなのですが、鳩山首相はワシントン・ポストのコラムでloopy(変わった、気の変な)などと救いの無い書き方をされていました。

政府の公式な言葉と一新聞のコラムを同一視するなといわれればそれまでですが、アメリカの大新聞のコラムでは往々にして政府高官のリークが背景にあるのは紛れもない事実です。

安部総理が言われたdisappointedは期待していたのにそれが裏切られたという、少しばかりの肯定的な意味合いはありますが、鳩山総理のloopyにはそれが全くありません。

日米関係においては歴史認識の問題よりもやはり利害関係の方が重要なのです。

というわけで、日米の利害関係が一致している場合は安部総理の歴史観はそんなに問題にならないのではないかというのが筆者の結論です。

ただ安部総理の進める政策が本当に戦後レジームからの転換になるかどうかは私には全くわかりません。マコーマック教授のいうようにさらなる属国化を招く恐れがないとは言い切れません。