アメリカの保守系評論家、パトリック・ブキャナンが「新孤立主義」について書いています。

それはウォルター・リップマンが指摘したように「馬鹿げたグローバリズム」の反動から起こったもので、1964年以来つまりベトナム戦争敗北から初めての現象だとして次のように続けています。

「新しいPewの世論調査によれば、52%のアメリカ人はアメリカは自分のことだけに専念すべきで、他の国は自分の力でやっていくべきだと信じている。これについては38%の反対しかない。

またアメリカはもっと自国の問題に集中し、国際問題に関わる比重を下げるべきかと問われ、5:1の割合でそう考えている人が多かった」

アメリカの世論はかなり内向きになっていることがわかります。オバマ大統領もこのような世論があるからシリアなどの問題でも躊躇せざるをえなかったわけです。

アメリカ国民の過半数が内向きになっているので、これから大きな戦争は起こらないのでしょうか。以前から私が指摘しているイランとの戦争は妄想だったのでしょうか。

実はそんなに簡単なことではありません。

つい最近、アメリカの上院でイランに対する追加制裁の法案が提出されました。このことについてピーター ベイナートがこう書いています。

「一体全体なぜマルコ・ルビオやテッド・クルーズ達は大胆に同じ党の大統領に反旗を翻したのだろうか。なぜそんなに著名な民主党の上院議員が民主党系の外交戦略家達があざける法案を支持したのだろうか。それは草の根の民主党員は中東の問題に興味をなくしたが、AIPACは全然そうではないからだ」

AIPACとはイスラエルを擁護するロビー団体のことです。

つまりブキャナン氏が指摘したように、「新孤立主義」の影響でアメリカ国民は中東の問題に興味を失ったのですが、その間隙をついてイスラエル擁護の団体が票と資金で議員達を差配しているというわけです。

このようなアメリカ議会の構造が存在するのでイラン問題について私はなかなか楽観できません。

最後に保守系のパット・ブキャナンとオバマ大統領も、アメリカが新たな戦争を始めたくないことでは共通していますが、重大な違いがあります。

前に書いたように、オバマ大統領は日本を含めた世界各地の米軍基地を維持して「アメリカ帝国」を存続させたいというのが本音ですが、ブキャナンはそうではありません。彼は世界各地の米軍を引き揚げさせたいのです。

アメリカ国民がこれからも「新孤立主義」が示すようにどんどん「内向き」になっていくことは避けられません。そうなった時にアメリカは「帝国」を続けていくか「共和国」に戻るかの重大な岐路に立っています。

アメリカが「帝国」を続けるならば日米安全保障条約は続くと思われますが、「共和国」を選択すればそれは粉々に吹っ飛ぶことになるでしょう。