手嶋龍一氏と佐藤優氏の共著『知の武装』を読み終わりました。

今回のが3冊目の共著になるわけですが、だんだんとマンネリ化するとともに粗が目立ってきた感じが私にはします。

一つの例として両氏の韓国論について疑問を呈しておきます。

現在、日本は尖閣諸島を巡って中国と争っています。その中国と日本が対峙するためにはどうしても日米韓の連携が必要で、特に「韓国との関係を優先すべきです」と佐藤氏は語り、手嶋氏も「竹島問題、慰安婦問題、戦時下の韓国人労働者への日本企業の賠償問題については、韓国に対して大胆な妥協を図るべきだと思います」と提案しています。

本当に日本が妥協したら、韓国は日米韓の枠組みにきっちりと収まることが可能なのでしょうか。

私にはこの議論はとてもひとりよがりなものにみえます。現在の韓国がどのような外交をしているかを全く考慮していないからです。

朴槿惠の韓国は中国とアメリカを両天秤にかける政策を遂行しようとしています。そして日経ビジネスの鈴置高史さんは韓国が米中間で泳ぎ回るために次の3点が重要だと『中国という蟻地獄に落ちた韓国』という本に書いています。

1 米国との関係は維持しつつ、中国の懐に飛び込む

2 米中両大国を後ろ盾に、北朝鮮と日本を封じ込める

3 「日本の右傾化」や「戦犯国としての反省のなさ」を世界で言い募る

この中で韓国にとって、とても大事なのが3の「反日」の役割です。これによりアメリカなどが中国の嫌がる日米韓の軍事的な結びつきを強めようとした時に韓国が「日本が悪い」と逃げることができるからです。

このような時にいくら日本が韓国に対して譲歩しても、韓国はさらに条件をかさ上げして「反日」体制を維持するでしょう。

もちろん韓国の中国とアメリカを天秤にかける政策がうまくいく保証はありません。

アメリカのバイデン副大統領が訪韓した時に「今回の歴訪中、ほかの国でも、米国とは逆にベッティングするのは良いベッティングではない、と言い続けてきた」と語っています。

さすがに、アメリカも韓国のやり方を見抜いているのです。

韓国がアメリカと同盟せずに単独で中国とアメリカを競い合わせる政策を行うことは、アメリカも渋々認めるでしょうが、韓国は一応アメリカの同盟国なわけです。アメリカの同盟国である韓国が中国とアメリカを天秤にかけることは当然に信義にもとる行為で、アメリカも不満たらたらでしょう。

ということでインテリジェンス マスターであられる手嶋氏と佐藤氏の韓国論を真に受けたら日本の国益を相当に傷つけると思われます。