日本の保守派の中にはアメリカを批判することを嫌う人がたくさんいます。曰く、日本は現在中国と領土問題で争っているのに、こんな時にアメリカを批判したらアメリカに見捨てられるのではないか・・・

このような議論はどこまで正統性があるのでしょうか。今回はフィリピンの例を見てみます。

1991年にフィリピンの上院はスービック湾の米軍基地を新たに10年間貸すことができるという法案を否決します。もうひとつの大きな米軍基地であるクラーク空軍基地も火山の爆発で使用できなくなっていました。

つまり、フィリピンの議員は冷戦が終了したために、Yankee go home と叫んでしまったのです。

こんなことをしたらアメリカはフィリピンと結んだ安全保障条約を破棄するのではないかと日本人の私からしたら思うのですが、そのようなことはなかったようです。

さて、フィリピンが米軍基地を放棄してから20年の時が過ぎました。この間中国は着実に力をつけていよいよ南沙諸島でフィリピンに対して色々な嫌がらせをしかけてきます。

このような時に米軍基地を失ったフィリピンは中国の要求に唯々諾々と従ったのでしょうか。またアメリカも基地を奪ったフィリピンに対して冷たい仕打ちをしたのでしょうか。

そんなことはありませんでした。フィリピンは国連の場でも中国に対してきちんと反論していますし、アメリカもフィリピンが中国の攻撃の餌食にならないように3250トンもある船籍をフィリピン海軍に売り渡しているのです。

エドワード・ルトワックのRise of Chinaではフィリピンの外交を次のように描いています。

「2011年6月23日、フィリピンの外相アルベルト・デ・ロサリオはアメリカのヒラリー・クリントン国務長官に対して、南シナ海でのフィリピンと中国の対立に対して1951年の米比安全保障条約でのアメリカの立場をはっきりさせるよう要求した。さらにフィリピンの外相はアメリカに対してフィリピンの海洋を守るためにフィリピン海軍を強化するためにアメリカの余剰の戦艦を頼んだ。クリントン国務長官はこれらのフィリピンの要求に対して確約した」

読者の皆さんは、これらのフィリピンの対米外交を見てどう感じたでしょうか。私は日本と比べても大変堂々としていると思います。

昔、経済学者の飯田常夫氏が日本の対米外交には「植民地根性」が染み付いていると批判されていました。しかしアメリカの本当の植民地であったフィリピンにはアメリカに対する「植民地根性」は存在していなかったのです。