昨日のブログでヘンリー・キッシンジャーを引用した時に気付いたことを書いてみます。

まずは『産経新聞』のニュースから。

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米国は大統領選まで日本とのTPP協議を事実上棚上げしていた。だが、オバマ大統領再選が決まり、早期の交渉参加表明を改めて日本に促すほか、「TPPの求める高い基準」(米通商代表部のカーク代表)を満たすよう、自動車や保険などの重点項目で厳しい注文を突き付ける局面もあり得る。

 米国には他国と通商交渉を始める際、議会に90日前までに通告して承認を得る「90日ルール」があり、米国側は議会対策として、日本に対し重点分野の市場開放を訴えてきた。

 だが、自動車分野は輸入車市場で米国車のシェアが低いとして、業界団体が日本独自の規格の軽自動車の廃止や、米国車向けの輸入枠確保を求めているほか、保険分野でも日本郵政グループの政府関与が米保険業界の参入を阻害すると反発。牛肉分野では牛海綿状脳症(BSE)に絡む米国産牛肉に対する規制が緩和されるものの、依然として米国側の不満は強い。

 米商工会議所のドナヒュー会頭は「事前協議を見る限り、やるべき作業が残っている」と強調。米側は業界の要望を伝え、日本の譲歩を待つ戦略だ。

 ただ、日本の参加自体が危ぶまれれば、「米国にとってもTPPのメリットが薄れる」(外交筋)のも事実だ。市場開放を主張する自動車労組も、大統領選が終わったことで支持母体としての影響が薄れるとみられ、圧力が緩和される可能性もある。
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昨日も書いたようにキッシンジャーはアメリカ外交の特徴として「孤立主義」と「十字軍(宣教師)」とに分裂していると書いています。

しかし、両者ともに共通の信念が存在しているとして次のように指摘するのです。

「すなわち、アメリカは世界最高のシステムを持っており、他の国々がその国の伝統的な外交を放棄し、代わりにアメリカの信奉する国際法と民主主義を取り入れれば平和と繁栄を手に入れることができるという信念である」

キッシンジャーはアメリカの外交について書いているのですけれど、経済政策にも同じことが現れていて、それがTPPだと私は思うのです。

そしてTPPの背景にある「アメリカのシステムがベスト」というのはイデオロギーであって事実ではありません。

アメリカの医療保険制度はコストの割に効果が薄く、以前読んだアメリカ人が書いた The Healing of America という本ではフランスや日本の制度を高く評価していました。

また今回のニュースで取り上げられていた自動車の問題も、馬力はあるが燃費の良くないアメ車に果たして日本でそんなに需要があるのでしょうか。

もちろん、アメリカが最高のシステムやサービスを維持している分野はたくさんあります。

AmazonやAppleなどの例を挙げることができますが、彼らはTPPが無くても立派に日本の市場を開拓しているのです。

というわけで、TPPが圧迫感に満ち溢れて、宣教師臭いのは背景にアメリカン・イデオロギーがあるからなのです。