もうこれ以上書くつもりはなかったのですが、手嶋さんのホームページで佐藤氏がこの本について「インテリジェンスというプリズムを通して現下の領土問題やイランの核開発問題を分析した本としては、大変高い水準だと思う」と語っているのを読んで、最後に一つだけ書いておこうと思います。

佐藤氏は現在の北朝鮮を昭和20年の日本に例えています。そして北が望んでいるのは「国体護持」なのだから、交渉を上手く行えば核を放棄させることが出来ると語っています。

ところが、同じ本の中で彼らは、中国が国連決議を無視して弾道ミサイル用の特殊車両を北に密輸した話をしているのです。

一体、昭和20年の日本に特殊な兵器を密輸してくれる国があったでしょうか。

依然として中国は北朝鮮を支えており、決して北朝鮮を見捨てるつもりはないのです。

翻って、イランの場合を考えてみましょう。イランの国境は西側ではイラクに接し、東側ではアフガニスタンに接しています。

そして、アメリカはイラク、アフガニスタン両国に侵攻したのです。

おまけに、イランには国連決議を無視して援助してくれる国は存在していません。

「地政学」的にみても、イランの方がはるかに切羽詰まった状態にあるのです。

ではなぜ佐藤氏はイランに対して偏見を持っているのでしょうか。

本人は、逮捕された時に「イスラエルの手先だと怪文書が出回った」と自虐的に語っていますが、私はこの説をとりません。

おそらくは、現在のアメリカでのキリスト教右派が、盲目的にイスラエルを支持していることと関係があると思っています。信仰の問題なのでしょう。

そして、その説に手嶋さんが無批判にうなづくのは、アメリカの介入好きの権力者の話ばかりを聞いているからだと思います。

確かに国家としての立場からは「強いものには巻かれろ」は必要なことかもしれませんが、ジャーナリズムがそれだけだと困るのです。