国際問題研究所の小谷哲夫という人が石原都知事の尖閣購入についてこう書いています。

「今にして思えば、石原慎太郎東京都知事が4月にワシントンで都による尖閣諸島の購入の意向を発表したときに、すでに日米中関係の変容は避けられないものとなっていたのだ。石原知事の発表は、日中両政府だけでなくアメリカ政府も困惑させた。つまり、石原知事は尖閣の領有権主張を強める中国政府にも、有効な対抗策を打ち立てられない民主党政権にも、そして尖閣の領有権については中立の姿勢を貫くアメリカ政府にも不満を持っていた。だからこそ、わざわざワシントンで尖閣の購入計画を発表したのだろう。」

確かに、石原都知事の勝手な行動が、日、米、中という大国の外交を振り回す結果となってしまったわけです。

これまでの日本の近代史の中で、国家の長でないものがこれだけの外交的な影響力を与えた事例はあったでしょうか。

一つ考えられるのが満州事変です。

石原莞爾という一中佐に過ぎ無い帝国軍人が首謀し、後々まで影響を及ぼしたのが満州事変でした。

石原莞爾の満州事変と石原慎太郎の尖閣購入の似ている点を挙げてみましょう。

1,どちらも現状(status quo)に不満を持っていました。

2,どちらも絶妙のタイミングでした。満州事変が発動されたのが1931年で1929年の世界大恐慌の2年後です。このためアメリカもなかなか手出しができませんでした。石原都知事の場合も、なぜかリーマンショックの後に行われています。

3,満州事変も尖閣購入もそれまで潜在的な日中の対立を「顕在化」させることになってしまったのです。よく満州事変から敗戦までを15年戦争と呼ぶ学者がいますが、日中の対立からみれば納得できます。

最後に尖閣問題で露見した日中の対立はいつまで続くのでしょうか。満州事変のように15年戦争のような事態になるのでしょうか。

『産経新聞』の古森記者が次のように書いています。

 「米国海軍大学校の『中国海洋研究所』のピーター・ダットン所長は中国の海洋戦略の特徴として『領有権主張では国際的な秩序や合意に背を向け、勝つか負けるかの姿勢を保ち、他国との協調や妥協を認めません』と指摘した。『中国は自国の歴史と国内法をまず主権主張の基盤とし、後から対外的にも根拠があるかのような一方的宣言にしていく』のだともいう。だから相手国は中国に完全に屈するか、『永遠の摩擦』を覚悟するか、しかないとも明言する。」

「永遠の摩擦」を覚悟せよというわけです。

どうも、中国共産党が崩壊するまで解決は無いようです。