私は安倍自民党新総裁に対して経済政策の転換は期待していますが、安全保障に関しては慎重になって欲しいと思っています。

ところが、早速次のようなニュースが出てきました。

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自民党の安倍晋三総裁は15日、アジア歴訪中のバーンズ米国務副長官と党本部で会談し、「政権をとったら集団的自衛権の行使の解釈を改めたい。日米同盟強化にもなるし、地域の安定にも寄与する」と述べ、集団的自衛権の行使を禁じる政府の憲法解釈を見直す考えを示した。
『朝日新聞』
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アメリカの方でも、民主党系のジョセフ・ナイが次のように発言しています。

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日本が1930年代のような攻撃的な立ち位置に戻るべきだと言っているのではない。集団的自衛に関わる力を備えた国家という意味だ。日本は好戦的でもないし、攻撃的になる危険性もないと見ているが、一方で普通の国として振る舞いながら集団的な自衛に参加できるはずだということだ。
『ダイヤモンド・オンライン』
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これまでジョセフ・ナイは、日本が「普通の国」になることは危険だと一貫して書いたり、しゃべったりしてきました。ところが、この発言では日本が集団的自衛権を認めて普通の国になることを奨励しています。もちろん彼は日本が憲法を改正することには反対という意見は変えていないと思います。

一体どういった理由でナイは日本が集団的自衛権を行使するべきだと言っているのでしょう。

安倍総裁は、「地域の安定に寄与する」と語っていることから中国を念頭においているのは間違いないでしょう。三橋貴明さんもブログにこう書いています。

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現在、アメリカ海軍の空母が東シナ海と南シナ海に配備されています。目的は当然、中国に対するけん制です。
 日本の国益に利する形でアメリカ海軍が動いており、日本の海上自衛隊が同行していたとします。その状況でアメリカ軍が攻撃を受け、日本の海自が「何もしない」などという事態になったら、安倍総裁ではないですが、その瞬間に日米同盟は終わります。集団的自衛権の行使は、憲法解釈の見直しだけでできますので、政権交代後の最初の閣議で是非、実現して欲しいと思います。
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では、ジョセフ・ナイが日本に集団的自衛権の行使を求めるのは、「中国」を念頭においているのでしょうか。

私には、そうとは思えません。

ここからは私の想像ですが、おそらくナイは対中国ではなくて対イランについて考えているのでしょう。

もし、アメリカがイランとの戦争になった場合、最も恐れられているシナリオがホルムズ海峡の封鎖です。

そうなった場合、アメリカの戦略家が世界で有数の掃海能力を持つ海上自衛隊の活用を考えていても不思議では無いでしょう。

もちろん、私の想像が間違っている可能性は十分にあります。しかし現時点で、アメリカが中国とイラン、どちらと戦う可能性が大きいかと問われたら、イランとの可能性の方が高いことは断言できます。

だから、安倍新総裁が東シナ海を念頭に集団的自衛権を発動したら、実際に発動した場所がペルシャ湾だったということになりかねないのです。

私が、安全保障政策に慎重になって欲しいと思っている理由です。