現在の中東での対立は、イスラエルとイランだけにとどまりません。もう一つ重要なのは、スンニ派を代表とするサウジアラビアとシーア派を代表とするイランとの対立です。

イランの核に対する強硬姿勢は、イスラエルとサウジアラビアではあまり変化はありません。

現在のアメリカはサウジアラビアと戦略的な関係を持ち、イランに圧力をかけています。

問題は、このアメリカとサウジアラビアとの関係が永続的なものであり、中東の安定、発展に結びついていくかなのです。

私は、サウジとアメリカの関係は石油を除いては脆弱な関係だと考えています。

以前、スティーブン・キンザー氏の『リセット』という本の中で、これまでの中東の歴史の中で自発的に民主化を達成したのはイランとトルコだけだということが書かれてありました。(自発的に民主化したイランが、戦後石油の国有化を行いました。それに怒ったイギリスとアメリカがクーデターで民主的な政権を潰すのです。それがホメイニ革命にまでつながっていきます。)

一方、サウジアラビアは、アメリカで起きた9・11事件の犯人を多数出したことでもわかるように、宗教的に保守反動が強い国なのです。

アメリカは、中東でトルコの次に民主的な可能性があるイランを、その可能性がほとんどないサウジアラビアと一緒になって圧迫して、長期的に何の利益があるのでしょうか。

実は、このサウジアラビアとイランの関係は、戦前の中国と日本の対立に似ています。

満州事変以降の日本は、軍部の力が強かったですが、それでも選挙がきちんと行われており、大正デモクラシーの伝統も強かったのです。

一方、アメリカが応援した蒋介石の中国は、選挙など経験したことの無い、独裁の国でした。

第2次大戦の結果、日本は敗れましたが、アメリカが応援した国民党は、中国国民からも嫌われ、台湾に逃れます。決して、アメリカと国民党は永続的な戦略関係は結べなかったのです。

一方、あれだけ激しい戦争を行った日米が、冷戦という環境変化の中で、あっという間に同盟関係を結んでから、現在まで60年間も同盟を続けているのです。

つまり、私が言いたいことは、長期的で安定的な関係を結びたいのならば、民主的な可能性のある国を選ぶべきだということです。

アメリカは核を巡ってイランとの戦争におちいり、イランに多数の犠牲者を出してから、戦略環境が変わったからと、またイランとの同盟関係を結ぶ可能性すら考えられるのです。

こんな阿呆らしい戦争はありません。

さらに、サウジアラビアは、アメリカがイランをやっつけてくれて嬉しいのでしょうが、戦前の中国国民党のように自分自身がひっくり返る可能性があります。

イギリスのマイケル・ハワード卿が、「イランが核兵器を持つよりも、唯一悪いものは、それを止めようと武力を使うことである。」と言ったことは、正しいと私は思っています。