時事通信 5月25日(金)5時29分配信
【エルサレム時事】イランの核開発疑惑をめぐる国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランの協議は24日、イラクの首都バグダッドで2日間の日程を終えた。合意には至らず、次回協議をモスクワで6月18、19日に開催することで一致した。
焦点のウラン濃縮停止をめぐる双方の隔たりは大きく、協議は難航。急きょ日程を延長して話し合いを続け、決裂は避けられた形だ。しかし、次回の協議で核疑惑解明に向けた枠組みで合意に達するめどは立っていない。
6カ国側は軍事転用が容易な20%のウラン濃縮停止を迫ったが、イランは見返りに早期の経済制裁の緩和を要求するなどし、停止を受け入れなかったとみられる。
どうも、イランとの核に対する協議はうまくいっていないようです。
現在、私はイラン系アメリカ人のトリタ・パルシ氏が書いた A Single Roll of the Dice というオバマ大統領時代のアメリカとイランの関係を書いた本を読んでいる途中です。
その中で2009年に、イランの低濃縮ウランをイラン国外に持ち出して、それを医療用に加工してからイランに渡すという案が持ち上がります。これによって核兵器に転用できるウランを少なくできるのが目的です。
この外交が上手くいっていれば良かったのですが、そうはなりませんでした。
ちょうどこの時、イランで総選挙が行われて、ムサビという改革派が主導するグリーン・ムーブメントが勢いを増すものの、結局はアフマニネジャド大統領が勝利しました。しかし、納得のいかない改革側は、デモを開始し、大統領側も弾圧を強化していきます。
このような状態で、イランと欧米諸国が協議を開始したのです。
アハマニネジャド大統領は、なんとか妥結したかったみたいですが、こともあろうに改革派のムサビ氏が反対に回ってしまったのです。その理由を著者は次のように書いています。
「もし低濃縮ウランの交換が上手くいけば、これまでの科学者の努力が無駄になってしまう。もしそれが失敗すれば、イランへの制裁が強まり、それはアハマニネジャド政権の無責任な政策のせいだ。」
つまり、成功すれば政権側の得点になるが、失敗すれば政権の汚点になるので、低濃縮ウランの交換に反対すると、改革派のムサビ氏は言っているわけです。
改革派のムサビ氏の反対と保守派の反対で、それまで賛成だった宗教指導者のカネメイ氏まで反対に回り、アハマニネジャド大統領は孤立し妥協は図られなかったのでした。
私は、以前から現在のイランのように国内が分裂している場合、本当に妥協が図れるか疑問でしたが、やはり無理のようです。
特に欧米諸国が応援したムサビ氏がこの交換に反対したのが決定的です。国内がPoralize(極端化)した政治では、相手の足を引っ張ることしか考えられなくなるのです。
ということは、このままイランの国内では政敵の足の引っ張り合いで、誰も核を止められなくなり、我慢できなくなったイスラエルが動き出すという展開が予想されます。
この場合、一体誰が悪いのでしょうか。