以前、兵藤二十八氏の本に書いてあった「聖域」という概念について書いてみたいと思います。

 日本が日中戦争に勝利できなかったのは補給が続かなかったからでした。この場合中国の奥地が「聖域」の役割を果たしていたのです。このため日本軍は国民党を攻めきれなかったのです。

 同じような理由でナチス・ドイツもソビエトを攻め落とすことができませんでした。

 また少し違った形では朝鮮戦争が挙げられます。北朝鮮には中国が持っているような「聖域」はありませんでしたが、地続きの中国やソ連が北朝鮮に補給を行い彼らが「聖域」の役割を果たしていたのです。マッカーサー将軍は満州を爆撃することを進言しましたが、トルーマン大統領に拒否されました。

 ヴェトナム戦争でも同じように中国が「聖域」の役割を果たしていました。

 さて、アフガニスタンの問題ですが、アメリカがアフガニスタンで攻撃をするとタリバンはパキスタン側に逃げてしまうのです。

 これまでの国際政治では「聖域」を提供するのは朝鮮戦争に於ける中国のように「仮想敵」に限られていました。ところがアフガニスタンに「聖域」を提供しているのはアメリカの同盟国のパキスタンなのです。

 オバマ大統領はこのパキスタンの態度に相当腹を立てているようです。アフガニスタンとパキスタンの国境近くのパキスタン領内でかなりの数の無人爆撃機(ドローン)を使用しているようです。

 今回のビン・ラディン殺害でもパキスタンを無視してやったと書いてある欧米のメディアもありました。

 ところが、このアメリカのやり方にパキスタン人民が怒りをあらわにし、パキスタン国家が不安定化しているようなのです。

 パキスタンが崩壊してしまえば核の拡散などのややこしい問題が次々に起こってくるのはさけられません。

 今回のビン・ラディン殺害がアメリカの成功とはとうてい思えないのです。