ウォルター・ラッセル・ミードが『ニューヨーク・タイムズ』に「ティー・パーティーとアメリカ外交」という評論を書いていますので、少し感想を書いてみたいと思います。

 ティー・パーティーには相容れない2つの外交方針が存在しているとミードは書いています。

 一つ目はパーリン派。元アラスカ州知事サラ・パーリンを代表する考え方で「アメリカとイスラエルとの緊密な同盟を背景に積極的に中東のテロリズムと戦っていく」という立場をあらわしています。

 もう一つがポール派です。ロン・ポール議員の考え方で「アメリカは既存の同盟関係から得る利益は少ないので、同盟関係を減らしていこう」というものです。

 ヘンリー・キッシンジャーの『外交』という本の中で、アメリカ外交には「十字軍」と「孤立主義」という違いがあると書いていましたが、ティー・パーティーにもこの指摘が当てはまります。

 ではサラ・パーリンの「反テロ十字軍」とロン・ポールの「孤立主義」、どちらが勝利をおさめるのでしょうか。

 ミードはパーリン派に軍配を上げます。「アメリカ国内の安全は対外関与を抜きにしては考えられないからだと」書き「現在でも64%のアメリカ人がイランの核開発を終わらせるためにイランを攻撃するに賛成だ」ということを証拠に挙げています。

 私はミードの考え方に反対です。

 シカゴ大学のミアシャイマー教授やハーバード大学のワルト教授らが「イスラムが反米になったりテロの温床になっているのは、アメリカが異教徒の土地に土足で上がり余計な介入を行っているからで、イスラムがアメリカの文化や民主主義を憎んでいるのではない。」と唱えていることの方が私には説得力があります。

 果たしてアメリカがイランと戦ったらテロを根絶することが出来るのでしょうか。

 おそらく今しばらくはアメリカの外交はパーリン派の主張するものとなるでしょうが、いずれこの「反テロ十字軍」は破綻するものと私は考えています。

 そして最後に勝利するのは「孤立主義」に違いありません。