1929年に起こったアメリカ大恐慌の後で、アメリカ議会は輸入品に高い関税をかけるスムート・ホーリー法を通過させました。この法律によって世界貿易は激減し、それが第2次世界大戦に結びついたという説が有力なのですが、ポール・クルーグマン教授は間違っているとブログに書いておられます。少し引用してみます。

 教授は現在のアメリカのマクロ問題はアメリカ国内で生産された財やサービスをアメリカ人が十分に消費しないことであると書いています。

 GDP=消費+投資+政府支出+輸出ー輸入という式で書き表せます。

 アメリカがTPPなどの自由貿易を行ったら、当然輸出は増えますが、同じくらいの輸入が増えるためGDPとしてはほとんど変化はありません。

 逆に、保護主義の場合は輸入が減りますが、同じぶんだけ輸出も減るため総体は変わりません。だからスムート・ホーリー法が第2次世界大戦を生んだというのはナンセンスだというのです。

 もちろん自由貿易にはいいこともあります。それは世界経済を効率化させるということです。しかし需要を増やすことはしてくれないのです。

 さらに現在の環境下で自由貿易を行うことはさらなる失業の拡大につながる恐れがあります。アメリカの得る仕事が高い生産性のものであり(1つのモノを作るのに少ない労働者しか必要としない)、失う仕事が低い生産性のものであるならば(1つのモノを作るのに多数の労働者を必要とする)、消費する量が一定となった場合、同じGDPでは少ない仕事しか得られないことになるからです。

 世界経済が需要不足の場合、貿易の自由化はほとんど意味がありません。フランスの知識人エマニュエル・トッドも全く同じことを指摘していますが、クルーグマン教授の説明の方がわかりやすいと管理人は思います。

 なお通産省出身の中野 剛志氏(現在京大)が保護主義に対して日本で一番最初に注目していたことを書き留めておきます。