前回、三橋貴明さんの著書を紹介し、その本の中で彼はこれからの時代、大国は「保護主義」になるだろうと予想していました。そして私はもし本当にそのようなことが起これば、アメリカは第2次世界大戦以前の状態に戻ることになると書きました。今回はその続きです。

 アメリカでは第2次世界大戦の前と後で貿易に対する考え方が変わったことはすでに述べましたが、もう一つ急激に変化したものがあります。それは安全保障に対する考え方です。

 第2次大戦以前のアメリカはどちらかといえば「孤立主義」の考えが強く、中南米に関してはそうでもなかったのですが、ヨーロッパやアジア地域については直接軍事力を使うことを躊躇しました。第1次大戦でもアメリカは後のほうになって参戦しますが、戦争が終わるとさっさとヨーロッパ大陸から引き上げていきましたし、アジアにおいても「門戸開放」を大きな声で語りましたが、軍事力の裏付けはほとんどありませんでした。

 ところが第2次大戦が終わり冷戦が始まるとアメリカの安全保障に対する態度が急激に変わったのです。日本やドイツなどに直接米軍基地を置くようになりました。このようなあり方を英語でForward Deployment などと言われています。第2次大戦後のアメリカの戦略を特徴づけているものは「自由貿易」とこの「海外の米軍基地」だと私は思っています。

 実はこの「自由貿易」と「米軍基地」はある種の「交換」関係になっていると解釈することも可能です。すなわちアメリカが日本に基地を置く変わりに、日本は世界最大の市場である米国市場に自由にものを売ることが出来る、という交換関係です。現にアメリカが最大の基地をおいている日本とドイツが経常収支の黒字を溜め込んでいるからです。

 ところが、冷戦終了後に中国という国が、日本やドイツよりも黒字をためこむという新たな展開をみせ、結局のところグローバル・インバランスという問題を拡大させてしまったのでした。

 そこで本当に三橋さんのおっしゃるようにアメリカが「保護主義」になれば、これまでの「自由貿易」と「米軍基地」の交換関係が成り立たなくなってしまいます。アメリカが自由貿易をやめるなら米軍基地の前方展開もやめてもらわなければ困るのです。

 本当にこのようなことが起こるのでしょうか。

 大英帝国の例を考えてみましょう。イギリスの覇権を特徴づけていたものもアメリカとよく似ています。一方には「自由貿易」がありもう一方にはインドなどに代表される巨大な「植民地」が存在していました。

 1929年の大恐慌の後でイギリスは自国の植民地などに特恵関税をはりめぐらせました。自由貿易を捨ててしまったのです。その結果日本はインド、オーストラリア、マレーシアなどの貿易が激減してしまいました。

 ところが第2次大戦の結果、イギリスの植民地は大打撃を受けることになり「自由貿易」をやめたら「植民地」もやめざるをえない状態をむかえたのでした。

 イギリスは「保護主義」と「植民地」を両立することができませんでした。アメリカはほんとうに「保護主義」と「海外の米軍基地」を両立させることができるのでしょうか。

 私はできないと思っています。