先日紹介した『日米同盟vs.中国、北朝鮮』という本のなかでリチャード・アーミテージが日本の現在の政治状況を「同時に大正デモクラシーの末期にやや雰囲気は似ていなくもない。言わんとしているのは、日本で再び軍部が台頭するということではなく、より右派の政府が誕生する可能性もあるということです」と語っています。またジョセフ・ナイも戦前の日本について「私は日本国内での変化、特に大正デモクラシーを巡る国内の葛藤があり、さらに世界大恐慌が追い打ちをかけて・・・ということだと思ってます」と語っています。

 アーミテージもナイも日本が戦前軍国主義になったのは国内での民主的な改革が失敗したからだと思っているようです。(アーミテージはそれが現在にもあてはまると感じています)この点について私は半分しか賛成できません。というのは対外要因を無視しているからです。それは中国の存在です。(この本に対するアマゾンでの書評で一人の人が指摘していました)

 アメリカ人ジャーナリスト、フレデリック・ウィリアムズは『中国戦争宣伝の内幕』という本の中で、中国で共産党の影響力が強まってきた時の蒋介石の態度を次のように描写しています。

 「蒋介石は驚き、『反日』という方法で中国を統一する考えに絶望的にしがみついた。そして彼や金持ち達から大衆の視線をそらそうとしたのだ」

 この文章は天安門事件の後で江沢民がやったことと全く一緒なのです。中国は戦前も戦後も国をまとめられないと感じた時は「反日」をやるのです。これは国民党、共産党に共通しています。

 当然中国のこういう態度は戦前も戦後も同じように日本国内にも跳ね返ってきます。最近出た内閣府の調査でも、「中国に『親しみを感じない』と答えた人が77.8%で、前年比19.3ポイントの大幅増。日中関係を『良好だと思わない』と考える人も88.6%(前年比33.4ポイント増)で、いずれも1978年以降の調査で過去最高。『親しみを感じる』人は20%(同18.5ポイント減)とほぼ半減し、過去最低だった。 」と『朝日新聞』は書いています。

 このように日本人が「反中」になったことについて、アーミテージはこの本の中で面白い指摘をしています。

 「ところで今、中国の人たちと個人的に話をすると彼らがなにを恐れているかがわかります。それは日本の政治情勢なのです。彼らは鳩山氏や管氏の、あるいはその後に来る人のことを心配しているのです。なんとも皮肉ではないですか。彼らが言わんとしているのは、日本の右傾化のことなのです。」

 中国の上層部の人たちは国をまとめるためにおもいっきり「反日」をやっといて、それが日本にはねかえって右傾化することを恐れているらしいのです。こういうことをマッチポンプというのじゃないでしょうか。

 私は日本と中国が戦前のように全面戦争をするとは考えていませんが、だいぶ冷えた関係になっていくんじゃないかと思っています。ナイやアーミテージは中国の「反日」が日本の政治におよぼす影響が見えていません。おそらく戦前のアメリカもそうだったのでしょう。