ワシントン・ポストのトム・リード記者が書いた The Healing of America という本を読みました。この本は各国の健康保険制度がどのようになっているのかがわかりやすく書かれています。さらに、この本の面白いところはリード記者の持病である肩の故障( bum shoulder)を日本やフランス、もちろん著者の祖国のアメリカでも診察を受けてどのような治療が受けれるかまで調べているのです。

 さて、日本やフランス、ドイツ、アメリカの企業に勤める人たちの保険はビスマルク・モデルというものでひとくくりに出来るとリード記者は書いています。この制度はドイツの宰相ビスマルクが始めたもので、労働者と会社が折半で費用を出し合い民間の保険に入るというものです。

 日本やドイツ、フランスの保険会社は非営利でなければならないのですが、アメリカでは営利企業の保険に入らなければいけないそうです。この違いが恐ろしい結果をもたらします。

 日本やフランスの場合は医者の処方箋は絶対とされ、保険会社はそれを強制的に支払うことになります。ところがアメリカの保険会社は営利企業が行っているために、その保険会社は株主の期待に応えることが第一になってきます。

 アメリカの患者さん達は、病気にかかれば医者の処方で本当に保険がおりるか、毎回厄介な交渉をしなかればなりませんし、ひどいのは病気で会社をクビになればその日から保険がおりなくなるのです。

 さらに最悪なのはrescissionと呼ばれるもので、労働者が大病を患うと保険会社が保険が「無効」になったと通告してくるのだそうです。このように営利企業が健康保険を扱っているためにアメリカの保険制度はとんでもないものになっているのです。

 またアメリカでは国民が全員なんらかの健康保険制度にはいるという制度にもなっていませんので、現在は4000万人の非保険者がいますし、オバマ大統領の改革でも2000万人の非保険者がでるそうです。

 もちろんアメリカの場合は科学技術が世界最高ですからお金持ちは世界最先端の治療を受けられるのですが。

 ニューヨークにあるコモン・ウェルス・ファンドというところが健康保険制度の比較研究を行い番付を発表しています。

 1、フランス
 2、日本
 3、スペイン

 15、アメリカ

 ここで特筆すべきことはアメリカがGDPの16%もお金をつぎこんでいるのにこのような結果しか得られていないのに比べて、日本はGDPの8%でこの順位を達成しているのです。

 ということで、日本の医療制度は世界最高水準にあることは間違いのないことですが、その上をいくフランスとは一つだけ違いがあります。

 フランスの場合はオンライン化されていて、15歳以上の患者はカードをくれるそうです。そこにはそれまでの処方、検査結果、あらゆるものが入っているそうです。なぜ日本にはそれができないのでしょうか?