日本はアメリカと戦争をして負けました。

 鳥居民さんの『昭和20年』によりますと吉田茂や近衛文麿は戦争末期にソビエトに仲介を頼むことには反対だったそうです。彼らはいずれアメリカとソ連の対立が厳しくなると予想し、日本がアメリカに降伏してもいずれチャンスがあると考えていたそうです。

 しかしアメリカに対して日本が降伏しても、アメリカが本当に日本に「工業化」を許してくれるのかなどは全く予測不可能でした。

 これらの疑問を全て解決したのが「朝鮮戦争」だったのです。

 あれだけ「東洋のスイス」になれと日本に激励の言葉を贈っていたマッカーサーですが(本当のスイスとは全然違います)が、朝鮮戦争が勃発すると180度態度が変わります。

 「7月8日、マッカーサーは独断で国家警察予備隊、7万5千人の創設を書簡で命令した。ワシントンは、これに関知しなかった。これは韓国に出払った第8軍の残した空白を埋めるためである。民政局のジャスティン・ウィリアムスは、野党である社会党と民主党の幹事長をよんで、予備隊問題を国会で取り上げることを禁止し、違反すれば処罰すると申し渡している。」(片岡鉄哉『さらば吉田茂』145頁)

 吉田茂は朝鮮戦争を「天佑」と呼んでいました。これを英訳したらGod Bless Japan になるかもしれません。

 このように明治維新の時には「南北戦争」、敗戦のときには「朝鮮戦争」という日本とは全く関係ない事件によって日本は救われてきたのです。

 今回も、冷戦が終わりバブルが弾けて日本は苦境におちいりますが、アメリカにおいてもバブルがはじけるという新たな局面が展開しました。

 果たしてこれが「南北戦争」や「朝鮮戦争」のような役割を日本にもたらすかどうかは今のところはっきりしませんが、筆者はその可能性があるのではないかと期待しています。