今回の鳩山政権の崩壊について評論家の内田樹氏が次のように書いています。

 「民主党政権は8ヶ月のあいだに、自民党政権下では前景化しなかった日本の『エスタブリッシュメント』を露呈させた。
 結果的にはそれに潰されたわけだが、そのような強固な『変化を嫌う抵抗勢力』が存在していることを明らかにしたことが鳩山政権の最大の功績だろう。
 エスタブリッシュメントとは『米軍・霞ヶ関・マスメディア』である。
 米軍は東アジアの現状維持を望み、霞ヶ関は国内諸制度の現状維持を望み、マスメディアは世論の形成プロセスの現状維持を望んでいる。」


 最近の英国のエコノミスト誌やアメリカのニューズウィーク誌を読んでいて感じるのは、どうも日本の外交を従来の「対米従属」そのままにしておいて、国内の問題についてダイナミックな改革を主張していることです。そして国内の改革がうまくいかないと無能だと批判するのです。

 本当に国内でダイナミックな改革を行うためには、外交もそれなりに変わらなければならないのではないかと筆者は思います。

 極端な例かもしれませんが、北朝鮮の金正日は国内での弾圧を強化するために、韓国の艦船を撃沈させたことは以前に書きました。これも外交と内政が連動している一例です。

 また、これは鳥居民さんの本に書いてあったことですが、戦前に近衛文麿首相は「大政翼賛」運動を開始しますが、それには外交政策も付随していました。彼は日・独・伊の3国にソビエトを加えた4カ国同盟を作ろうとしていたというのです。

 このユーラシア大陸を横断する同盟があればアメリカと対抗することができると近衛首相は考えていたようです。ドイツでもリッベンドロップ外相が同じようなことを考えていたのでこの幻の4カ国同盟はうまくいくかもと思わせたのですが、愚かなヒトラーが独ソ戦を開始してしまったために台無しになりました。

 当然国内の「大政翼賛会」もほとんど機能しませんでした。

 さてこのように国内政策と外交政策が連動していると考えると、見えないものが見えてきます。

 米ソ冷戦が終了したのとほぼ同時に日本のバブルが崩壊したという事実です。

 日本は米ソ冷戦が終了した時点で従来の対米一辺倒の外交政策を変えておくべきでした。しかしそのような外交的な変革は行われず、結局国内の改革もできなかったのです。

 結果「対米従属」デフレという症状が10年以上続いているのです。

 ということで、日本の外交が変化しなければ国内の改革も進まないことが理解いただけたでしょうか。次回はいかに「対米従属」から脱却できるのか、いくつかのシナリオを考えてみます。