田原総一郎氏が韓国の哨戒艇撃沈事件を次のように解説していました。

私は、金総書記は「韓国艦の沈没は北朝鮮がやった」と言うために中国へ行ったのだと考える。中国はそれを聞いているから、いささかも慌てず、慎重な態度を見せているのではないか。

 では、金総書記はなぜ、わざわざそんなことを言いに行ったのか。私の見方はこうだ。金総書記は「軍が手に負えなくなった。何とかしてほしい」と中国に頼みに行った……。


 田原氏によれば、北朝鮮の人民解放軍が金正日を無視して、勝手に韓国の船を撃沈したのだそうです。

 なぜこんな考え方になるのか私なりに分析してみました。

 以前、小泉総理が訪朝した時に金正日は「拉致問題は部下が勝手にやったことだ」という主張を行いました。私などは最初からこのような発言を信じていなかったのですけど、田原氏はどうもこれを信じているみたいなのです。

 彼の拉致問題の発言を聞いていますと、北の当局者とほぼ同じことを繰り返しています。だから拉致被害者から訴えられてしまったわけですが。

 結局、田原氏が北朝鮮軍が勝手にやったと書いたのは、背景に金正日が拉致は部下が勝手にやったと言ったことを本当に信じていることがあるのでしょう。それ以外考えられません。

 私は以前から今回の事件は北朝鮮がデノミの失敗で人心不安におちいり、国内を引き締めるために対外危機を演出した、と考えてきました。同じようなことをつい最近の『朝日新聞』でユンという保守系の韓国人学者が次のように書いてました。

 「後継の構図に悪影響を及ぼしかねないことから中産層や体制に挑戦的な層を排除しようと貨幣改革(デノミ筆者注)を行ったが失敗して内部の不満が大きくなった。そこで危機局面をつくり内部を引き締めようとしたのではないか。」

 さてこの議論の問題点はいくら北朝鮮が危機局面を作ろうとも韓国兵50人近くを殺すことはやり過ぎではないのかというものでしょう。韓国との戦争になってしまったら北の策略もだいなしになってしまいます。

 しかしこの心配は全く杞憂でした。なぜならこの前行われた韓国の地方選挙で与党が「強硬だから」という理由で負けてしまったのです。韓国の有権者の方が戦争を恐れているのです。

 この選挙を見ながら、私は2002年の盧武鉉と李会昌の大統領選を思い出しました。このときもアメリカと北朝鮮の間が緊張し李会昌が当選したら北と戦争になると言われていました。そこで戦争を恐れた韓国人は盧武鉉を選んでしまったのです。

 今回も朝鮮半島で戦争の予感がしそうなとき、いち早く白旗を揚げたのは韓国の有権者なのでした。