クリントン大統領時代の国務次官補で現在ハーバード大学の教授をしているジョセフ・ナイ氏は日米が普天間問題で揉めだしたときにニューヨーク・タイムズに次のように書きました。
When I helped to develop the Pentagon’s East Asian Strategy Report in 1995, we started with the reality that there were three major powers in the region — the United States, Japan and China — and that maintaining our alliance with Japan would shape the environment into which China was emerging. We wanted to integrate China into the international system by, say, inviting it to join the World Trade Organization, but we needed to hedge against the danger that a future and stronger China might turn aggressive.
太字部分を簡単に訳します。「我々は中国をWTOなどの組織に入れて、中国を国際社会に統合したいと思っている。しかし、将来の中国が強国になり攻撃的になった場合に中国の危険性をヘッジする戦略も必要である。」
私も基本的にナイ氏の提案に賛成なのですが、本当に日米が共通の対中ヘッジ戦略を書けるのかという重大な疑問を持っています。少し、第2次大戦後の歴史を振り返ってみます。
国共内戦に中国共産党が勝利し、中国本土を統一しました。この時吉田茂は共産党が統一を果たした以上共産党政府を中国の正当な政府と認めなくてはいけないだろうと考えていましたが、アメリカのダレス国務長官はガリガリの反共で強引に日本に蒋介石の台湾を正統な政府と認めさせました。
日米ともに台湾を中国の正統な政府と認めてしまったために、大変な矛盾が起きました。それが「朝海の悪夢」とよばれるものです。日本の外交官である朝海浩一郎氏が駐米大使時代に「日本にとって最大の外交的悪夢は何か」と質問され、「日本があずかり知らぬ間に、頭越しに米中両国が手を握る状態が訪れることだ」と答えたそうです。
この「朝海の悪夢」は発言から10年たって現実になりました。キッシンジャーが日本の頭越しに中国との交渉を行ったのです。もちろん日本も負けていません。田中角栄首相は持ち前のパワーであっというまに米国よりも早く日中国交回復を成し遂げたのでした。この田中首相の行動にキッシンジャーは激怒したといわれています。
天安門事件が起きた時も、当初日本は衝撃を受けましたが、日本政府は中国を孤立させてはいけないと思っていたようです。一方ブッシュ(父)大統領は当初中国を厳しく批判して、私などは当時さすが民主主義の理想を掲げるだけのことはあるな、などと思っていたのです。ところが実際はスコウクロフト安全保障補佐官を極秘に中国に派遣して、中国をなだめていました。もちろん日本政府はこのことを知るすべはありませんでした。
また中国が台湾の総統選挙にミサイルを発射し介入した時、クリントン大統領は台湾に2隻の空母を派遣し中国をおとなしくさせました。この直後にナイ氏が活躍して日米のガイドラインができたので、私などは新日米同盟は対中国になったのだなと思っていました。ところがクリントン大統領は中国で江沢民といっしょになって日本を批判していたのでした。
そして、今回の核サミットでも『ワシントン・ポスト』によれば、最大の勝者は中国で日本は敗者(loser)なのだそうです。
簡単に戦後からの中国に対する日米の外交を振り返ってきましたが、このような状態で本当にナイ氏の主張する中国をヘッジする共通の戦略を日米で描けるのでしょうか?私は否定的です。日本のマスコミは基地問題で揉めるから日米同盟がおかしくなるのだと批判しますが、私は日米共通の戦略がないから基地問題でぎくしゃくすると考えています。
さらに日米が中国に対して共通の戦略を描けないのは、なにも第2次世界大戦後の話だけではありません。これまで何度も私のブログで引用したことのある、戦前中国の公使を勤めたことのあるアントワープ・マクマリーが書いたマクマリー・メモランダムには戦前中国に対して日・米・英が協調できなかった理由が書いてあります。
マクマリーによれば、日・米・英それぞれが一方的に中国に対して「好意提供競争」に走り、ただでさえ不安定なワシントン条約を掘り崩していったのだと書いています。このことは戦後の中国に対する日米の外交にもそのまま適用できます。
戦前から延々と続く中国に対する日米の協調できない外交は本当に修正できるのでしょうか。
When I helped to develop the Pentagon’s East Asian Strategy Report in 1995, we started with the reality that there were three major powers in the region — the United States, Japan and China — and that maintaining our alliance with Japan would shape the environment into which China was emerging. We wanted to integrate China into the international system by, say, inviting it to join the World Trade Organization, but we needed to hedge against the danger that a future and stronger China might turn aggressive.
太字部分を簡単に訳します。「我々は中国をWTOなどの組織に入れて、中国を国際社会に統合したいと思っている。しかし、将来の中国が強国になり攻撃的になった場合に中国の危険性をヘッジする戦略も必要である。」
私も基本的にナイ氏の提案に賛成なのですが、本当に日米が共通の対中ヘッジ戦略を書けるのかという重大な疑問を持っています。少し、第2次大戦後の歴史を振り返ってみます。
国共内戦に中国共産党が勝利し、中国本土を統一しました。この時吉田茂は共産党が統一を果たした以上共産党政府を中国の正当な政府と認めなくてはいけないだろうと考えていましたが、アメリカのダレス国務長官はガリガリの反共で強引に日本に蒋介石の台湾を正統な政府と認めさせました。
日米ともに台湾を中国の正統な政府と認めてしまったために、大変な矛盾が起きました。それが「朝海の悪夢」とよばれるものです。日本の外交官である朝海浩一郎氏が駐米大使時代に「日本にとって最大の外交的悪夢は何か」と質問され、「日本があずかり知らぬ間に、頭越しに米中両国が手を握る状態が訪れることだ」と答えたそうです。
この「朝海の悪夢」は発言から10年たって現実になりました。キッシンジャーが日本の頭越しに中国との交渉を行ったのです。もちろん日本も負けていません。田中角栄首相は持ち前のパワーであっというまに米国よりも早く日中国交回復を成し遂げたのでした。この田中首相の行動にキッシンジャーは激怒したといわれています。
天安門事件が起きた時も、当初日本は衝撃を受けましたが、日本政府は中国を孤立させてはいけないと思っていたようです。一方ブッシュ(父)大統領は当初中国を厳しく批判して、私などは当時さすが民主主義の理想を掲げるだけのことはあるな、などと思っていたのです。ところが実際はスコウクロフト安全保障補佐官を極秘に中国に派遣して、中国をなだめていました。もちろん日本政府はこのことを知るすべはありませんでした。
また中国が台湾の総統選挙にミサイルを発射し介入した時、クリントン大統領は台湾に2隻の空母を派遣し中国をおとなしくさせました。この直後にナイ氏が活躍して日米のガイドラインができたので、私などは新日米同盟は対中国になったのだなと思っていました。ところがクリントン大統領は中国で江沢民といっしょになって日本を批判していたのでした。
そして、今回の核サミットでも『ワシントン・ポスト』によれば、最大の勝者は中国で日本は敗者(loser)なのだそうです。
簡単に戦後からの中国に対する日米の外交を振り返ってきましたが、このような状態で本当にナイ氏の主張する中国をヘッジする共通の戦略を日米で描けるのでしょうか?私は否定的です。日本のマスコミは基地問題で揉めるから日米同盟がおかしくなるのだと批判しますが、私は日米共通の戦略がないから基地問題でぎくしゃくすると考えています。
さらに日米が中国に対して共通の戦略を描けないのは、なにも第2次世界大戦後の話だけではありません。これまで何度も私のブログで引用したことのある、戦前中国の公使を勤めたことのあるアントワープ・マクマリーが書いたマクマリー・メモランダムには戦前中国に対して日・米・英が協調できなかった理由が書いてあります。
マクマリーによれば、日・米・英それぞれが一方的に中国に対して「好意提供競争」に走り、ただでさえ不安定なワシントン条約を掘り崩していったのだと書いています。このことは戦後の中国に対する日米の外交にもそのまま適用できます。
戦前から延々と続く中国に対する日米の協調できない外交は本当に修正できるのでしょうか。
