筆者は日本が「政治大国」路線に進んでいくことを願っていますし、それが成功する確率も高いと思っています。問題は「政治大国」路線が成功した後にあります。

 同志社大学の村田教授は『アメリカ外交』という本に「戦前は軍事力の一面のみでアジアに覇を唱えて帝国を滅ぼし、戦後は経済力の一面のみで世界第2位の地位を手に入れてバブル経済に踊った日本である」と書いています。

 すごい冷たい書き方ですが、一部に真実を含んでいるのは事実です。

 明治の元勲たちは「富国強兵」というスローガンからもわかるように、「軍事大国」主義を目指しました。また第2次大戦後も吉田茂は経済優先の外交を展開し「経済大国」を目指したのです。

 彼らの目標は、「日露戦争の勝利」や「プラザ合意」などで達成されることになりました。

 しかし、日本が国家目標を達成したとたん、アメリカとの関係がぎくしゃくし始めます。

 結局はアメリカとの争いに負けて、敗戦やバブル崩壊といった惨憺たる状態に日本は陥ってしまったのです。

 日本がこれから「政治大国」に向かって進んでいけば、過去の例からも成功する可能性は高いでしょう。そして成功すれば同じようにアメリカとの関係は悪化するでしょう。

 そうなったときに、また日本は第2次大戦における敗戦やバブル崩壊のようになるのでしょうか?

 今度はそうならなでしょう。なぜなら「軍事大国」路線や「経済大国」路線は政治の力が弱かったために、力をコントロールできなかったからです。だから満州事変やバブル経済を起こしてしまったのです。「政治大国」路線ではそのことに心配はいりません。

 だから将来日本の「政治大国」路線が成功しアメリカとの対立関係が悪化しても、今度は日本は負けることはないだろうと私は予想しています。(何十年後にそうなるかは、わかりませんが)