今回は元外務官僚の岡崎久彦さんの外交論をとりあげてみます。
彼は『繁栄と衰退と』という20年程昔に出版した本の中で「近代史の上で日本国民が真に安全と繁栄と自由を享受したのは、日英同盟の20年間と日米安保条約の40年間である」と書かれています。
彼がこの文章を書いた後にバブルがはじけ、日米安保を結んでいても、決して繁栄には結びつかなかったのですが、とりあえずこの問題は横においときます。確かにイギリスとアメリカと同盟を組んでいる時、日本が深刻な安全保障の問題に直面しなかったのは事実ですから。
しかしながら皆さんもご承知の通り日英同盟は英国の側から破棄されてしまったわけです。岡崎氏の言われるとおりイギリスとアメリカをひとまとめに「アングロサクソン」という言い方が正しいなら、アメリカも日本との同盟を重荷に感じたら日米同盟を破棄する可能性はあるのではないでしょうか。
もちろん岡崎さんもそういう可能性は承知しているのでしょう。彼は2つの仮説を持ち出します。日本が第一次大戦時に欧州に陸軍を派遣したら、日英同盟は存続していただろうと予測します。さらに日米同盟も日本が集団的自衛権を行使すれば、これからも同盟存続は可能だろうというのです。
しかし、筆者は第一次大戦時に日本が陸軍を派遣していたら、日英同盟が続いていたという説には否定的です。
第1に同盟には仮想敵が必要なのですが、第一次大戦で日英の共通の敵であったドイツが倒れてしまったのです。アメリカを次の仮想敵にする手段も考えられますが、これにはイギリスは反対したでしょう。
第2に、結局イギリスはアメリカの意向を組んで日英同盟を破棄したのです。パット・ブキャナンの本ではイギリスはアメリカに対してappeasement(融和)したと書いてありました。日本がもし陸軍を欧州に派遣してもアメリカの日英同盟に対する反感は強まることはあっても弱まることはありませんので結局アメリカの意向を気にしたイギリスは日英同盟は続けられなかったでしょう。
同じことは集団的自衛権についてもいえます。いくら日本が集団的自衛権の行使を行っても出来ることは限られています。それによってアメリカが同盟関係を今後も続けていくだろうと予測するのは、日本の力を過大評価し過ぎです。
ということで、いくら日本が集団的自衛権を行使しようがしまいがいずれ日米同盟も破棄されるだろうと筆者は思っています。そのきっかけとなるのは中国問題でしょう。
ジョセフ・ナイ教授がニューヨーク・タイムズに日米同盟の意義について「我々は中国を例えばWTOに入れることによって中国を国際システムに取り込もうとしている。しかし将来強力な中国が侵略的になるかもしれないための保険も必要である」と書いています。
この保険が日米同盟というわけです。この問題があるためにあれだけ基地問題で紛糾した同盟関係にもかかわらず話し合いを続けようというふうになったのでした。

お手数ですが、よろしくお願いします。
彼は『繁栄と衰退と』という20年程昔に出版した本の中で「近代史の上で日本国民が真に安全と繁栄と自由を享受したのは、日英同盟の20年間と日米安保条約の40年間である」と書かれています。
彼がこの文章を書いた後にバブルがはじけ、日米安保を結んでいても、決して繁栄には結びつかなかったのですが、とりあえずこの問題は横においときます。確かにイギリスとアメリカと同盟を組んでいる時、日本が深刻な安全保障の問題に直面しなかったのは事実ですから。
しかしながら皆さんもご承知の通り日英同盟は英国の側から破棄されてしまったわけです。岡崎氏の言われるとおりイギリスとアメリカをひとまとめに「アングロサクソン」という言い方が正しいなら、アメリカも日本との同盟を重荷に感じたら日米同盟を破棄する可能性はあるのではないでしょうか。
もちろん岡崎さんもそういう可能性は承知しているのでしょう。彼は2つの仮説を持ち出します。日本が第一次大戦時に欧州に陸軍を派遣したら、日英同盟は存続していただろうと予測します。さらに日米同盟も日本が集団的自衛権を行使すれば、これからも同盟存続は可能だろうというのです。
しかし、筆者は第一次大戦時に日本が陸軍を派遣していたら、日英同盟が続いていたという説には否定的です。
第1に同盟には仮想敵が必要なのですが、第一次大戦で日英の共通の敵であったドイツが倒れてしまったのです。アメリカを次の仮想敵にする手段も考えられますが、これにはイギリスは反対したでしょう。
第2に、結局イギリスはアメリカの意向を組んで日英同盟を破棄したのです。パット・ブキャナンの本ではイギリスはアメリカに対してappeasement(融和)したと書いてありました。日本がもし陸軍を欧州に派遣してもアメリカの日英同盟に対する反感は強まることはあっても弱まることはありませんので結局アメリカの意向を気にしたイギリスは日英同盟は続けられなかったでしょう。
同じことは集団的自衛権についてもいえます。いくら日本が集団的自衛権の行使を行っても出来ることは限られています。それによってアメリカが同盟関係を今後も続けていくだろうと予測するのは、日本の力を過大評価し過ぎです。
ということで、いくら日本が集団的自衛権を行使しようがしまいがいずれ日米同盟も破棄されるだろうと筆者は思っています。そのきっかけとなるのは中国問題でしょう。
ジョセフ・ナイ教授がニューヨーク・タイムズに日米同盟の意義について「我々は中国を例えばWTOに入れることによって中国を国際システムに取り込もうとしている。しかし将来強力な中国が侵略的になるかもしれないための保険も必要である」と書いています。
この保険が日米同盟というわけです。この問題があるためにあれだけ基地問題で紛糾した同盟関係にもかかわらず話し合いを続けようというふうになったのでした。

お手数ですが、よろしくお願いします。