現在発展しつつある中国が日本にとって本当に「脅威」なのかを検証してみたいと思います。
以前ポール・クルーグマンの本を読んだ時に見つけたのですが、彼は経済問題でもっとも重要なのは「生産性」であり、これにより賃金や生活水準も決まってくると指摘していました。
例えば労働生産性という概念は一人の労働者がある期間内(通常1年)に生産した付加価値を表します。結果的にこの数値は一人の労働者がどれだけ「効率的」に生産したかを示すものなのです。
実は同じ事は「戦争」に関しても当てはまります。『太平洋戦争は無謀な戦争だったか』を書いたジェームズ・ウッドは戦争の勝敗は物量の多寡ではなく、いかに効率的に軍隊を運用できたかで決定する、と指摘しています。
もちろん戦争の場合は「戦う場所」により結果は随分違いますが、他の条件が全て同じ場合「効率」の良い軍隊を投入できたものが勝利するというごく当たり前の事を指摘しているだけです。
で、何が言いたいのかというと、軍事力や経済力といった全く違う要素でも「効率性」という観点から見れば同じ事なのだ、と主張したいわけです。「効率性」の高い軍隊が「強力」な軍隊であり、「効率性」の高い経済が「強い」経済なのです。
ドイツ軍がヨーロッパで最強なのは、ドイツ企業が高い生産性を持つことと同じ事なのです。また、アメリカ軍が世界最強である事とアメリカの企業が高い利益を上げる事も同じ事なのです。さらに、日本経済が第2次大戦後に急激な生産性上昇を達成できたことと、戦前の日本の軍隊もそれなりに強かったことは同じ事なのです。
そこで私は聞いてみたい。「中国軍は強いのか?」と。
北村稔・林思雲『日中戦争』に方誠という中国人大佐が1946年に発表した本から引用した文があります。
「敵軍の中級以上の士官の戦術レベルは、我が軍よりも一、ニ段階は高い。下級士官の場合は二、三段階は高い。そして兵士の素質に至っては、我が軍は全く敵に及ばない。単独で戦闘できる能力でみると、我が軍は中隊の兵力でも、単独で戦闘はできない。しかし敵は、一つの班あるいは一人の兵士でさえも単独で戦闘し、大きな効果を発揮する」
この文章は日中戦争時の日本軍を中国人が客観的に分析したものですが、よく読んでみますとこれは「日本的経営」の神髄を示しているものともいえます。
現在の中国共産軍は国民党の軍隊からどのぐらい進歩しているのでしょうか?私はそんなに変わっていないと思います。「歴史」というものはそんなに急には変わらないものなのです。
結論を書いてみます。確かに日本にとって中国の核兵器は脅威です。しかし他の経済力や軍事力は全然「効率的」でないのでそんなに恐れる必要はないのです。

お手数ですが、よろしくお願いします。