今日から数回に分けてフレデリック・ヴィンセント・ウィリアムズというアメリカ人が1938年に書いた『中国戦争宣伝の内幕』という本を紹介したいと思います。

 日中戦争に関して書かれているものとしては最近私が読んだ中で一番です。さらに彼は日中戦争の現場を直接見て書いているので、一次資料的な役割を持っているものと思われます。話があちらこちらに飛ぶかもしれませんが、その点はご容赦ください。

 さて、日中戦争直前に中国の通州というところで200人近くの日本人が虐殺される「通州事件」が起こりましたが、著者のウィリアムズによると日本と国民党を戦わせたかった共産党がおこさせたようです。

 彼は、「日本人の友人であるかのように警護者の振りをしていた中国兵による通州の日本人男女、子供らの虐殺は、古代から現代までを見渡して最悪の屠殺集団として歴史に記録されるだろう」と書き、また「これは通州のことである。古い町だが、中国で最も暗黒なる町の名前として何世紀の後も記される事だろう」とも書いています。

 残念ながら、彼の予想は外れました。それに代わって、現代では「通州」ではなく「南京」という地名が中国人ではなく日本人の残虐さをあらわすものになってしまいました。

 ちなみに、この本の中では「南京大虐殺」を思い起こさせるようなものを何一つ見いだす事は出来ませんでした。

 また、蒋介石が戦争を外国人がたくさん住む上海に拡大させようと考え、2000人の日本海軍の陸戦隊に精鋭の中国軍10万人を使って攻撃させたことについて、彼は次のように書きます。

 「軍事史が記録されるとき、あのクリミア戦争でロシア軍と戦ったイギリス軽旅団やその他の有名な聯隊と同じように圧倒的な不利にも拘らず、1週間持ちこたえたこの2,3千名の日本兵の立場でそれは書かれるだろう」

 ウィリアムズのこの予想も残念ながら外れてしまいます。キッシンジャーの『外交』ではこの事件を「日本の軍事侵攻再開」としか書いていません。

 この本を読みながら、私は深いため息をついてしまいました。これから読む「歴史」の本も米、英、中といったプロパガンダのうまい国の史観を読まされるのでしょうか。それともいつかはウィリアムズが書いたような真実が発見される日がくるのでのでしょうか?

 後者であって欲しいと願ってやみません。
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中国の戦争宣伝の内幕―日中戦争の真実/フレデリック・ヴィンセント ウイリアムズ

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