小柴胡湯
<出典>
傷寒論
金匱要略
<構成>
a.
柴胡 半夏 黄芩 人参 大棗 甘草 生姜.
b-1.
柴胡4.0 半夏5.0 黄芩3.0 人参3.0 大棗4.0 甘草2.0 生姜4.0
b-2.
柴胡7.0 半夏5.0 黄芩3.0 人参3.0 大棗3.0 甘草2.0 生姜4.0(乾1.0)
c-1.
處方中の柴胡と黄芩は特に胸脇部に働き,消炎・解熱・疎通の効がある
半夏と生姜は悪心・嘔吐を止め,食欲を進めて柴胡・黄芩に協力する
人参は甘草・大棗と共に胃の機能を亢め,胸脇部の充塞感を緩解する
>from: 〈漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水
c-2.
組合せの中で最も重要なのは柴胡と黄芩で,柴胡は肝機能を調節するらしく,黄芩は血熱を去る
半夏,人参は之に次ぎ,胸脇心下の水を行らし且つ半夏は肺を補い人参は脾胃を補う
甘草,生姜,大棗もそれぞれの薬能を以て働くと共に諸薬の作用を補助する
from: 〈漢方入門講座〉 竜野 一雄
<特徴>
a.
本方の証は,表の邪はすでに解消し,病が少陽の部位,すなわち半表(外)半裏に進み,いわゆる胸脇苦満の症状を現わしたときに,これを目標として用いる。
少陽の部位は,横膈膜を中心に,気管支,肋膜,腹膜,肝胆,胃などにあたり,胸脇苦満というのは,季肋部の中心に,肋骨弓の上下の部分,および脇肋の皮膚,筋肉,皮下組織等に炎症と緊張異状をきたし,胸内が一杯につまったような苦満感を訴え,肋骨弓下部を圧迫すれば,抵抗と圧痛を証明するものである。
この現象はこれらの場所に内熱によって腫脹硬結が起こり,胸壁にむけるリンパ腺にも腫脹と硬結を生じたことによるものである。その他脈は沈弦で,食欲不振,口苦,舌白苔,嘔吐,往来寒熱,心下悸,頸項こわばり,耳聾等を目標とする。また肝胆の経絡に従い,頸項部より陰部疾患にまで及んでいる。
体質的に用いるときは,必ずしも往来寒熱や嘔吐なくともよいのである。
胸脇苦満の証がそれほど顕著でなくても用いてよいことがある。
>from: >〈漢方百話〉 矢数 道明
b.
柴胡7.0 半夏5.0 生姜4.0(乾1.0) 黄芩3.0 大棗3.0 人参3.0 甘草2.0
(傷寒論)
○傷寒五六日中風,往来寒熱,胸脇苦満,嘿々不欲飲食心煩喜嘔,或胸中煩而不嘔,或渇,或腹中痛,或脇下痞硬,或心下悸,小便不利,或不渇、身有微熱,或欬者,本方主之(太陽中)
○血弱気尽,腠理開,邪気因入,与正気相搏,結於脇下正邪分争,往来寒熱,休作有時,嘿々不欲飲食,蔵府相連,其痛心下,邪高痛下,故便嘔也,本方主之(太陽中)
○傷寒四五日,身熱悪風,頸項強,脇下満,手足温而渇者,本方主之(太陽中)
○嘔而発熱者,本方主之(厥陰)
(金匱要略)
○産婦鬱冒,其脉微弱,嘔不能食,大便反堅,但頭汗出所以然者,血虚而厥,厥而必冒,冒家欲解,必大汗出以血虚下厥,孤陽上出,故頭汗出,所以産婦喜汗出者亡陰血虚,陽気独盛,故当汗出,陰陽乃復,大便堅,嘔不能食,本方主之(産後)
○婦人中風七八日,続得寒熱,発作有時,経水適断者,此為熱入血室,其血必結,故使如瘧状発作有時,本方主之(婦人雑病)
○傷寒差以後,更発熱,小柴胡湯主之(差後)
from: 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
<合方>
a.
喘息,腎臓病,湿疹などにかかりやすく再発しやすいアレルギー体質の改善や腺病体質,
滲出性体質の改善に不可欠の処方である
従って 本方は
当帰芍薬散,四物湯,小建中湯,半夏厚朴湯,苓桂朮甘湯,
麻杏甘石湯,小青竜湯,五苓散,桂枝茯苓丸
などと合方して用いることが非常に多い
>from: 〈漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎
b.
1. 柴胡桂枝湯
小柴胡湯と桂枝湯の合方である
比較的穏やかな薬方で,応用範囲が広く,余が日常頻用する方剤の一つである
此方に対する口訣は,此方は世医風薬の套方とすれども左にあらず
結胸の類症にして心下支結を目的とする薬なり
但表症の余残ある故に桂枝を用るなり
金匱には寒疝腹痛に用いてあり
即ち今所謂疝気ぶるひの者なり
及腸癰生ぜんとして腹部一面に拘急し肋下へ強く牽しめ,
其熱状傷寒に似て非なる者此方に宜し
又此方に大黄を加えて婦人心下支結して経閉する者に用ゆ。
奥道逸法眼の経験なり
2. 柴胡四物湯
小柴胡湯と四物との合方で,三元湯とも云う
口訣に曰く,
此方は小柴胡湯の症にして血虚を帯る者に宜し。保命集には虚労寒熱を主とすれども広く活用すべし
此方小柴胡加地黄湯に比すれば血燥を兼る者に験あり
3. 柴苓湯
小柴胡湯と五苓散の合方である
口訣に曰く,
此方は小柴胡湯の症にして煩渇下痢する者を治す。暑疫には別して効あり
4. 柴胡解毒湯
小柴胡湯に黄連解毒湯の合方である
口訣に曰く,
此方は傷寒のみならず,凡て胸中に蘊熱ありて咽喉に瘡腫糜爛を生じ,或は目赤頭瘡,或は諸瘡内攻壮熱煩悶する者を治す。古人の言通り 諸瘡瘍は肝胆経をねらふて柴胡を用るが定石なり
其内熱毒甚しき者は黄連解毒を合すべし。黄連能く湿熱を解すればなり
5. 柴陥湯
小柴胡湯に小陥胸湯の合方である
此方には縁があって,先父が肋膜炎に対して特効薬的に用いた関係上,そのまま承け継いで肋膜炎,肺炎,気管支炎,肺結核に濫用している
これは本朝経験のものであるから,本邦人の案になる薬方である
小柴胡湯の證に小陥胸湯の證を合併した場合に用ひると云へばそれまでであるが,臨床的にはなかなか分らない
経験上肋膜炎には屢々著効を奏するから,肋膜炎には傷寒論の結胸證に当るものだと考へるだけのものである
本方に対する浅田先生の口訣は難解である
此方は医方口訣第8条に云通り,誤下の後邪気虚に乗じて心下に聚り,其邪の心下に聚るにつけて胸中の熱邪がいよいよ心下の水と併合する者を治す
此症一等重きが大陥胸湯なれども,此方にて大抵防げるなり
又馬脾風の初起に竹筎を加へ用ゆ。其他痰咳の胸痛に運用すべし
6. 柴蘇飲
これは小柴胡湯と香蘇散の合方である
香蘇散は風邪に対する軽い発散剤として用いられる
故に此方は小柴胡湯に軽い発散の意味を加えたもので,感冒後大勢は解したが,僅かの所がサッパリしないという場合に用いてよろしい
殊に感冒後の頭重,耳聾によい,又微熱咳嗽にもよい
口訣には
此方は小柴胡の證にして鬱滞を兼る者に用ゆ。耳聾を治するも,少陽の余邪欝滞して解せざるが故なり。其他邪気表裏の間に鬱滞する者に活用すべしとある
風邪後の耳聾とは欧氏管の腫脹狭窄によるもので,耳の塞った感じ,物音が遠くに聞える,軽い耳鳴等を訴へる場合を指す
7. 柴胡三白湯
小柴胡湯に白朮,茯苓,芍薬を加えたもので,浅田家の家方になってゐる
口訣に曰く,
此方は参胡三白湯の症しして熱勢一等甚き者を治す。又暑痢嘔渇,腹痛不止者を治す
8. 人参飲子
これは小柴胡湯に麥門,竹葉を加えたものである
口訣に曰く。
此方は小柴胡湯の一等熱甚しく,煩渇嘔吐止まざる者を治す
咳嗽には杏仁を加え,潮熱するには鼈甲を加う
往年麻疹後の勞熱に用いて特効あり
其他諸病に活用すべし
9. 加味小柴胡湯
其方は小柴胡湯に竹筎,麥門,黄連,滑石,茯苓を加えたものである
口訣に曰く,
此方は一老医の伝にて,夏秋間の傷寒協熱痢に経験を取りし方なれども,余は毎に滑石を去りて,人参飲子の邪勢一等重く,煩熱心悶する者を治す
又竹筎温胆湯の症にして往来寒熱する者を治す
from: 〈漢方と漢薬〉小柴胡湯の合方 木村 長久
<出典>
傷寒論
金匱要略
<構成>
a.
柴胡 半夏 黄芩 人参 大棗 甘草 生姜.
b-1.
柴胡4.0 半夏5.0 黄芩3.0 人参3.0 大棗4.0 甘草2.0 生姜4.0
b-2.
柴胡7.0 半夏5.0 黄芩3.0 人参3.0 大棗3.0 甘草2.0 生姜4.0(乾1.0)
c-1.
處方中の柴胡と黄芩は特に胸脇部に働き,消炎・解熱・疎通の効がある
半夏と生姜は悪心・嘔吐を止め,食欲を進めて柴胡・黄芩に協力する
人参は甘草・大棗と共に胃の機能を亢め,胸脇部の充塞感を緩解する
>from: 〈漢方診療の実際〉 大塚,矢数,清水
c-2.
組合せの中で最も重要なのは柴胡と黄芩で,柴胡は肝機能を調節するらしく,黄芩は血熱を去る
半夏,人参は之に次ぎ,胸脇心下の水を行らし且つ半夏は肺を補い人参は脾胃を補う
甘草,生姜,大棗もそれぞれの薬能を以て働くと共に諸薬の作用を補助する
from: 〈漢方入門講座〉 竜野 一雄
<特徴>
a.
本方の証は,表の邪はすでに解消し,病が少陽の部位,すなわち半表(外)半裏に進み,いわゆる胸脇苦満の症状を現わしたときに,これを目標として用いる。
少陽の部位は,横膈膜を中心に,気管支,肋膜,腹膜,肝胆,胃などにあたり,胸脇苦満というのは,季肋部の中心に,肋骨弓の上下の部分,および脇肋の皮膚,筋肉,皮下組織等に炎症と緊張異状をきたし,胸内が一杯につまったような苦満感を訴え,肋骨弓下部を圧迫すれば,抵抗と圧痛を証明するものである。
この現象はこれらの場所に内熱によって腫脹硬結が起こり,胸壁にむけるリンパ腺にも腫脹と硬結を生じたことによるものである。その他脈は沈弦で,食欲不振,口苦,舌白苔,嘔吐,往来寒熱,心下悸,頸項こわばり,耳聾等を目標とする。また肝胆の経絡に従い,頸項部より陰部疾患にまで及んでいる。
体質的に用いるときは,必ずしも往来寒熱や嘔吐なくともよいのである。
胸脇苦満の証がそれほど顕著でなくても用いてよいことがある。
>from: >〈漢方百話〉 矢数 道明
b.
柴胡7.0 半夏5.0 生姜4.0(乾1.0) 黄芩3.0 大棗3.0 人参3.0 甘草2.0
(傷寒論)
○傷寒五六日中風,往来寒熱,胸脇苦満,嘿々不欲飲食心煩喜嘔,或胸中煩而不嘔,或渇,或腹中痛,或脇下痞硬,或心下悸,小便不利,或不渇、身有微熱,或欬者,本方主之(太陽中)
○血弱気尽,腠理開,邪気因入,与正気相搏,結於脇下正邪分争,往来寒熱,休作有時,嘿々不欲飲食,蔵府相連,其痛心下,邪高痛下,故便嘔也,本方主之(太陽中)
○傷寒四五日,身熱悪風,頸項強,脇下満,手足温而渇者,本方主之(太陽中)
○嘔而発熱者,本方主之(厥陰)
(金匱要略)
○産婦鬱冒,其脉微弱,嘔不能食,大便反堅,但頭汗出所以然者,血虚而厥,厥而必冒,冒家欲解,必大汗出以血虚下厥,孤陽上出,故頭汗出,所以産婦喜汗出者亡陰血虚,陽気独盛,故当汗出,陰陽乃復,大便堅,嘔不能食,本方主之(産後)
○婦人中風七八日,続得寒熱,発作有時,経水適断者,此為熱入血室,其血必結,故使如瘧状発作有時,本方主之(婦人雑病)
○傷寒差以後,更発熱,小柴胡湯主之(差後)
from: 増補改訂版 重要漢方処方解説口訣集』 中日漢方研究会
<合方>
a.
喘息,腎臓病,湿疹などにかかりやすく再発しやすいアレルギー体質の改善や腺病体質,
滲出性体質の改善に不可欠の処方である
従って 本方は
当帰芍薬散,四物湯,小建中湯,半夏厚朴湯,苓桂朮甘湯,
麻杏甘石湯,小青竜湯,五苓散,桂枝茯苓丸
などと合方して用いることが非常に多い
>from: 〈漢方処方解説シリーズ〉 今西伊一郎
b.
1. 柴胡桂枝湯
小柴胡湯と桂枝湯の合方である
比較的穏やかな薬方で,応用範囲が広く,余が日常頻用する方剤の一つである
此方に対する口訣は,此方は世医風薬の套方とすれども左にあらず
結胸の類症にして心下支結を目的とする薬なり
但表症の余残ある故に桂枝を用るなり
金匱には寒疝腹痛に用いてあり
即ち今所謂疝気ぶるひの者なり
及腸癰生ぜんとして腹部一面に拘急し肋下へ強く牽しめ,
其熱状傷寒に似て非なる者此方に宜し
又此方に大黄を加えて婦人心下支結して経閉する者に用ゆ。
奥道逸法眼の経験なり
2. 柴胡四物湯
小柴胡湯と四物との合方で,三元湯とも云う
口訣に曰く,
此方は小柴胡湯の症にして血虚を帯る者に宜し。保命集には虚労寒熱を主とすれども広く活用すべし
此方小柴胡加地黄湯に比すれば血燥を兼る者に験あり
3. 柴苓湯
小柴胡湯と五苓散の合方である
口訣に曰く,
此方は小柴胡湯の症にして煩渇下痢する者を治す。暑疫には別して効あり
4. 柴胡解毒湯
小柴胡湯に黄連解毒湯の合方である
口訣に曰く,
此方は傷寒のみならず,凡て胸中に蘊熱ありて咽喉に瘡腫糜爛を生じ,或は目赤頭瘡,或は諸瘡内攻壮熱煩悶する者を治す。古人の言通り 諸瘡瘍は肝胆経をねらふて柴胡を用るが定石なり
其内熱毒甚しき者は黄連解毒を合すべし。黄連能く湿熱を解すればなり
5. 柴陥湯
小柴胡湯に小陥胸湯の合方である
此方には縁があって,先父が肋膜炎に対して特効薬的に用いた関係上,そのまま承け継いで肋膜炎,肺炎,気管支炎,肺結核に濫用している
これは本朝経験のものであるから,本邦人の案になる薬方である
小柴胡湯の證に小陥胸湯の證を合併した場合に用ひると云へばそれまでであるが,臨床的にはなかなか分らない
経験上肋膜炎には屢々著効を奏するから,肋膜炎には傷寒論の結胸證に当るものだと考へるだけのものである
本方に対する浅田先生の口訣は難解である
此方は医方口訣第8条に云通り,誤下の後邪気虚に乗じて心下に聚り,其邪の心下に聚るにつけて胸中の熱邪がいよいよ心下の水と併合する者を治す
此症一等重きが大陥胸湯なれども,此方にて大抵防げるなり
又馬脾風の初起に竹筎を加へ用ゆ。其他痰咳の胸痛に運用すべし
6. 柴蘇飲
これは小柴胡湯と香蘇散の合方である
香蘇散は風邪に対する軽い発散剤として用いられる
故に此方は小柴胡湯に軽い発散の意味を加えたもので,感冒後大勢は解したが,僅かの所がサッパリしないという場合に用いてよろしい
殊に感冒後の頭重,耳聾によい,又微熱咳嗽にもよい
口訣には
此方は小柴胡の證にして鬱滞を兼る者に用ゆ。耳聾を治するも,少陽の余邪欝滞して解せざるが故なり。其他邪気表裏の間に鬱滞する者に活用すべしとある
風邪後の耳聾とは欧氏管の腫脹狭窄によるもので,耳の塞った感じ,物音が遠くに聞える,軽い耳鳴等を訴へる場合を指す
7. 柴胡三白湯
小柴胡湯に白朮,茯苓,芍薬を加えたもので,浅田家の家方になってゐる
口訣に曰く,
此方は参胡三白湯の症しして熱勢一等甚き者を治す。又暑痢嘔渇,腹痛不止者を治す
8. 人参飲子
これは小柴胡湯に麥門,竹葉を加えたものである
口訣に曰く。
此方は小柴胡湯の一等熱甚しく,煩渇嘔吐止まざる者を治す
咳嗽には杏仁を加え,潮熱するには鼈甲を加う
往年麻疹後の勞熱に用いて特効あり
其他諸病に活用すべし
9. 加味小柴胡湯
其方は小柴胡湯に竹筎,麥門,黄連,滑石,茯苓を加えたものである
口訣に曰く,
此方は一老医の伝にて,夏秋間の傷寒協熱痢に経験を取りし方なれども,余は毎に滑石を去りて,人参飲子の邪勢一等重く,煩熱心悶する者を治す
又竹筎温胆湯の症にして往来寒熱する者を治す
from: 〈漢方と漢薬〉小柴胡湯の合方 木村 長久