紅絹(もみ)色は、鮮やかな紅色に
ほんのり黄みを含んだ
あたたかみのある日本の伝統色です。
単なる「赤」ではなく
やわらかな光を帯びたような
少し橙がかった華やかな色合いが特徴です。
紅絹の由来は
染色の工程から生まれた色名です。
まず、鬱金(うこん)やクチナシ
などで布を黄色に染め
その上から紅花で染め重ねることで
独特の鮮やかな紅色が生まれました。
このとき、紅花を入れた袋を
水の中で揉み出して色素を出す工程があり
その揉む作業が語源となって
紅絹(もみ)色と呼ばれるように
なったといわれています。
つまり紅絹色は、
黄色と紅を重ねて作る
手間のかかった贅沢な色なのです。
平安時代には
紅絹色は女房装束の裏地や
重ね色として用いられ
動いたときにふと見える
華やかな差し色として愛されました。
表からは見えないけれど
袖口や裾からちらりとのぞく
紅絹は上品な色気と若々しさを
演出する色でもありました。
江戸時代になると
紅絹色は子どもの着物
振袖の裏地や長襦袢
などにも使われるようになります。
特に、子どもの着物の
裏に紅を使う風習は
「魔除け」「健やかな成長」の
願いが込められていました。
紅絹色は、明るく生命力を感じる色として
おめでたい場面にもよく用いられたのです。
昔の人は、赤(紅)には邪気を払う
病気から守る、命を守る
という力があると信じていたんです。
そのため
子供の着物には
裏地に紅絹色、袖口に紅
長襦袢に紅など
見えないところに紅を使いました。
特に産着や七五三の着物や
初節句の衣装などに紅絹色が
使われることが多くて
健やかな成長への願いが
込められていました。
紅絹色は
ただ華やかな色ではなく
子どもを守るための
祈りの色でもありました。
着物の内に忍ばせた紅は
魔除けとなり、健やかな成長を願う
親のやさしい想いだったのです。
伝統的な紅絹は
現在ではほぼ再現が難しい色とされています。
紅絹は、紅花のわずかな赤を揉み出し
さらに黄色の上に重ねて生まれた
手間と贅沢の結晶のような色でした。
しかし、天然染料の不安定さや
技術の継承の難しさから
当時と同じ紅絹色を再現することは
今では非常に困難とされています。
だからこそ紅絹色は
「もう一度見てみたい幻の紅」
とも言われているのです。
化学染料の普及で
技術が途絶えた明治以降
化学染料が普及すると
安い、色が安定、大量生産可能
という理由から
天然紅染めは急速に減少しました。
その結果
昔の紅絹色を作れる職人や技術が
ほとんど残っていないのです。
とても色あせやすい
紅花の赤は非常に繊細で
光や時間で退色しやすい特徴があります。
つまり
当時の本物の紅絹色も
現在は変色している可能性が高いのです。
これも本当の色が分かりにくい理由です。
紅絹色で小花や亀甲の古典柄の
着物を着た現代の女の人のイラストを
チャッピーに描いてもらいました。
紅絹色を使った風景画も
チャッピーに描いてもらいました。
春の夕暮れ
里山がやわらかな紅に染まるころ
紅絹色は、空にも花にも水面にも溶け込み
あたたかな光となって風景を包みます。
どこか懐かしく、やさしい春の記憶の色です。





